抄録
顎下部は,下顎骨や顎下腺に遮蔽されて病変が捉えにくいうえ,炎症性リンパ節腫脹をきたしやすく,その超音波診断に難渋することがある。今回,顎下部に超音波検査を施行し,病理学的確定診断のできた症例に関して(1)顎下腺疾患(2)顎下部リンパ節(3)唾石の超音波診断について検討し,その問題点と工夫について述べた。顎下腺疾患の正診率は82%とほぼ満足できるものだったが,顎下部リンパ節転移についての正診率は他の顎部領域に比べて低く,またワルトン管内唾石の検出率も低く,顎下部の特殊性によるものと考えた。口腔底からの圧迫下に超音波検査を行うと,病変の形状,大きさ,位置関係の変化の観察が可能で,診断に極めて有用と思われた。