頭頸部外科
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3 巻, 2 号
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  • 一色 信彦
    1993 年3 巻2 号 p. 107-111
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     片側声帯麻痺で発声時に声門大間隙を認める場合,最も確実な音声改善のための手術は披裂軟骨内転と甲状軟骨形成術I型を併用する方法である。
    本論文ではその手術手技について詳述し,本法を安全,容易にかつ効果的に行うコツを強調した。披裂軟骨内転術では十分な術野を得ることが先決でそのためには輪状甲状関節の離断(脱臼),上角あるいは甲状軟骨翼後縁の部分切除を必要とする事が多い。筋突起,輪状披裂関節を探しあてるには,いくつふの道標もあるが,甲状軟骨の形態は個人差も大きく,最も大切なことはよく觸診し輪状軟骨の側上方の尾根を確認し,輪状軟骨上を下から上へと鈍に刳離し,最後は同関節を開放し,同関節の輪状軟骨面を確認することである。
    甲状軟骨との併用手術では窓枠を切り出す操作と披裂軟骨筋突起からの糸を出す穴をあける操作の手順が重要である。
  • 古川 浩三, 設楽 哲也, 新美 成二
    1993 年3 巻2 号 p. 113-118
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     喉頭の機能を生命維持に重要な順にあげると1.呼吸,2.嚥下,3.発声となる。この呼吸という機能に関して喉頭の存在は通常ではあまり認識されないものであるが,いったん喉頭に障害が起こり両側声帯正中位固定(両側声帯麻痺)が起こればやっかいな問題になる。
    声帯麻痺の多くは一側性声帯麻痺であり,声に関してのみ注意し治療すればよいものであるが,少ないながら両側声帯麻痺の症例も存在し治療に難渋するのである。 この両側声帯麻痺の治療には従来から多くの方法が報告されている。いろいろな方法があるということは,どの方法にも一長一短があるということではないかと想像される。 ここで筆者は比較的簡単にできる前方開大術の実際の手技について報告する。
  • 福田 宏之
    1993 年3 巻2 号 p. 119-124
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    早期声帯癌に対しては,放射線療法,内視鏡下レーザー治療,声帯切除などが試みられる。いずれも一長一短あり適応を間違えなければそれぞれ優れている面がある。喉頭を切開して患側声帯を切除するのが切除範囲を決めたり,確実に切除するのに適している。しかしこの場合の欠点は残された音声に相当の障害が残ることである。それは声門閉鎖不全のため気息性の強い嗄声となるためである。そこで同側仮声帯の後部を茎とする筋粘膜弁を作成し,声帯を切除した跡地に移動,縫合して新しい声帯を作り声門閉鎖不全を防ぐ再建手術を考案した。声帯切除と同時に行えるので患者は術後一週間程度で会話可能である。
  • 久 育男, 立本 圭吾, 出島 健司, 西山 康之, 増田 有加里, 豊田 健司, 只木 信尚
    1993 年3 巻2 号 p. 125-130
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     若年型喉頭乳頭腫の2例(多発型1例,単発型1例)に対し顕微鏡下炭酸ガスレーザー手術とα型インターフェロン(aIFN)の併用療法を行った。多発例(両側声帯のびまん性ならびに右披裂部の有茎性病変)では,右披裂部の有茎性病変は一回のレーザー手術で完治したが,声帯病変に対しては4回のレーザー手術を要し,術後,前連合にwebを形成した。単発例(右声帯膜様部中央の有茎性病変)は後遺症もなく,一回のレーザー手術で完治した。多発例の3,4回目と単発例の術後に,aIFNの超音波ネビュライザー投与を行ったが,本投与法は副作用が少なく有用であると考えられた。
  • 黒野 祐一, 鈴木 正志, 重見 英男, 茂木 五郎
    1993 年3 巻2 号 p. 131-134
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     心臓血管外科の技術を応用した遊離弁栄養血管と外頸動脈および内頸静脈への端側吻合の手術手技を紹介し,その問題点と対策法を検討した。これまでに本法を用いて移植された遊離弁21例中,前腕皮弁使用例3例に壊死を生じ,その原因として血管の動脈硬化病変,結紮された内頸静脈への遊離弁静脈の端側吻合,内径が非常に細い遊離弁栄養血管などが考えられた。これらの対策法として動脈硬化が強い症例には動脈切開クランプを用い,栄養血管径が細い症例では血管柄をできるだけ長くとることを試みている。本法では,遊離弁の血管径に左右されることなく吻合を行うことができ,その手技も容易であり,頭頸部再建外科に有用な方法と考える。
  • 川城 信子, 土橋 信明, 荒木 昭夫, 古賀 慶次郎
    1993 年3 巻2 号 p. 135-139
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1984年から1992年迄に9例の乳児の声門下血管腫を経験した。これらの症例について,臨床的な特徴と治療と経過について報告した。9例中8例に手術を施行した。気管切開の後,喉頭截開し,顕微鏡下に腫瘍を摘出した。摘出の際,喉頭の粘膜を保存するように剥離した後,腫瘍を摘出し,粘膜をフィブリン糊で接着した。8例中7例はカニューレ抜去が手術後20日から6カ月で成功し,手術後の経過も良好であった。1例も経過順調である。9例中1例には気管切開の後,喉頭マイクロ下にNd-YAG laserを使用し,腫瘤は縮小した。
  • 桜井 一生, 岩田 重信, 高須 昭彦, 加藤 隆一, 浦野 誠
    1993 年3 巻2 号 p. 141-145
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1973~1991年の19年間に当科で一次治療を行った甲状腺分化癌71例のうち術後再発をきたした16例につき検討した。再発率は22.5%であり,再発部位は頸部リンパ節15例,遠隔転移7例,局所再発1例であった。再発例の病理組織は全例乳頭癌であった。再発率は,男性45.5%,女性18.5%であり,初回手術時の年齢が40歳未満の症例では10.5%,40歳以上の症例では26.5%であり,男性例,40歳以上の症例の再発率が高かった。また,T1-3では13.7%,T4では45.0%,N(-)では12.7%,N(+)では56.3%でありT4,N(+)症例の再発率が高かった。転帰は,6例は死亡,2例は担癌生存,他の8例は再手術後再発なく生存中である。
  • 樋口 香里, 安田 範夫, 西山 彰子, 村上 泰
    1993 年3 巻2 号 p. 147-153
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     顎下部は,下顎骨や顎下腺に遮蔽されて病変が捉えにくいうえ,炎症性リンパ節腫脹をきたしやすく,その超音波診断に難渋することがある。今回,顎下部に超音波検査を施行し,病理学的確定診断のできた症例に関して(1)顎下腺疾患(2)顎下部リンパ節(3)唾石の超音波診断について検討し,その問題点と工夫について述べた。顎下腺疾患の正診率は82%とほぼ満足できるものだったが,顎下部リンパ節転移についての正診率は他の顎部領域に比べて低く,またワルトン管内唾石の検出率も低く,顎下部の特殊性によるものと考えた。口腔底からの圧迫下に超音波検査を行うと,病変の形状,大きさ,位置関係の変化の観察が可能で,診断に極めて有用と思われた。
  • ―構音障害に対する外科的一工夫―
    松瀬 敏章, 梅崎 俊郎, 前山 忠嗣, 進 武幹
    1993 年3 巻2 号 p. 155-159
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     眼咽頭型筋ジストロフィーでは,主に外眼筋や嚥下関連筋が障害されることが多いとされている。我々は開鼻声を主訴に来院した一症例に対して,病態の進行が極めて緩徐であると考えられたため,開鼻声に対し外科的な一工夫を試みた。本症例では,軟口蓋の挙上が比較的保たれていたため,残存する軟口蓋の挙上を最大限に利用し,手術侵襲を軽減する目的でシリコンブロックを用いた咽頭後壁形成術を施行した。術後,開鼻声は著明に改善し現在外来にて経過観察中である。本症例の如く軟口蓋機能がある程度残存している開鼻声症例には,本法は有用な術式であると考えられた。
  • 湯本 英二, 門田 吉見
    1993 年3 巻2 号 p. 161-167
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     片側反回神経麻痺による嗄声の治療として,甲状軟骨形成術I型(以下,I型と略)を6例に施行し,6ケ月以上経過を観察した。4例で自覚的満足が得られた。この4例中3例では発声機能も良好であった。他のI例は麻痺側声帯が高位であったがI型で嗄声は著明に改善した。術後6~8ケ月で発声機能がやや悪化したが日常生活にまったく支障がなくなった。1例では,甲状軟骨翼に設けた窓枠が正中位の声帯よりもやや上方になったこと,そのために局所の浮腫をきたしたことが重なって十分な嗄声の改善を得られなかった。残る1例はレベル差が大きかったので後に披裂軟骨内転術を追加して良好な結果を得た。
  • 鰺坂 孝二, 古田 茂, 花牟禮 豊, 大山 勝
    1993 年3 巻2 号 p. 169-173
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当教室において,1984年4月1日から1992年5月31日までの8年2ケ月の間に,鼻副鼻腔パピローマ34例を経験した。平均年齢は58.1才で,男女比は約4:1と男性優位であった。臨床症状としては,一側鼻閉を呈するものが多かったが,パピローマが広範囲に進展している例では,眼球突出または視力低下といった眼症状を呈した。組織学的には,外方発育型5例に対し,内方発育型29例で,癌の合併または移行を6例に認めた。手術症例30例中6例に再発を認め,この内3例に癌への移行を認めた。
  • 山口 展正, 森山 寛
    1993 年3 巻2 号 p. 175-179
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     blowout fracture(BOF)50症例に対して整復術を行い画像診断,手術所見より数種のBOFのタイプが認められた。眼窩内側壁骨折に対しては鼻内的整復術を行い,その画像所見,鼻内手術所見から限局型,広範囲型,内直筋の絞扼などの症例が認められ,前篩骨洞・後篩骨洞をわけている第III基板(中鼻甲介基板)が一つの大切な指標になると考えられた。また眼窩下壁骨折として線状型・細裂隙型,広範囲型などが認められた。内視鏡を用いたBOF整復術は有効であった。
  • 永橋 立望, 福田 諭, 間口 四郎, 佐藤 信清, 佐藤 公輝, 犬山 征夫
    1993 年3 巻2 号 p. 181-186
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     当科における20歳以下の若年者頭頸部悪性腫瘍について,1980年から1992年までの13年間に当科を受診した男性11症例,女性5症例の計16症例を対象として検討した。若年者頭頸部悪性腫瘍の患者は,同時期の頭頸部悪性腫瘍患者の約0.5%を占め,病理組織学的には非上皮性腫瘍が10症例,上皮性腫瘍が6症例であった。年長者になるにつれ上皮性腫瘍の発生が多くなる傾向が認められた。非担癌状態の5年以上生存者7名中5名では,日常生活に支障をきたすほどの晩期障害は認めなかった。 治療成績が改善して,平均余命の長い若年者では機能温存,晩期障害の予防など患者のQOLの向上に対し,他科と協力してより一層の注意と長期観察が必要と思われる。
  • 八木 克憲, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 高橋 久昭, 中溝 宗永, 苦瓜 知彦, 保喜 克文, 丹生 健一
    1993 年3 巻2 号 p. 187-193
    発行日: 1993/11/26
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     T1,2N0舌癌において,頸部リンパ節後発転移の発現によりその予後は大きく影響される。1979年から1990年までのT1,T2舌癌1次例を対象に,後発転移の予測判断が可能か臨床的にその転移様相について検討した。 その結果,1)後発転移頻度はT1,T2ともほぼ同率であり,T1でも充分な注意が必要であった。2)後発転移症例の5年生存率は初診時N(+)症例と差はなく,潜在性転移が示唆された。3)臨床的に潜在性転移を判定し得る手段は見出し得なかった。4)転移発現は1年以内が多く,その治療成績は不良であった。2年以上経過後の転移症例の生存率は良好であり,初回治療後最低2年の厳重な経過観察が必要であった。
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