1993 年 3 巻 2 号 p. 155-159
眼咽頭型筋ジストロフィーでは,主に外眼筋や嚥下関連筋が障害されることが多いとされている。我々は開鼻声を主訴に来院した一症例に対して,病態の進行が極めて緩徐であると考えられたため,開鼻声に対し外科的な一工夫を試みた。本症例では,軟口蓋の挙上が比較的保たれていたため,残存する軟口蓋の挙上を最大限に利用し,手術侵襲を軽減する目的でシリコンブロックを用いた咽頭後壁形成術を施行した。術後,開鼻声は著明に改善し現在外来にて経過観察中である。本症例の如く軟口蓋機能がある程度残存している開鼻声症例には,本法は有用な術式であると考えられた。