Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ブロッコリー花蕾における貯蔵中のクロロフィル分解物生成に及ぼす高温処理の影響
キヤウスクサン サマ山内 直樹船本 佳央森 友彦執行 正義カンラヤナラット シリチャイ
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2007 年 76 巻 4 号 p. 338-344

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抄録

ブロッコリー(Brassica oleracea L. Italica Group‘緑帝’)花蕾のクロロフィル分解物生成に及ぼす高温処理の影響について検討した.高温処理(50℃,2 時間,温風処理)中におけるクロロフィル(Chl)a の変化はみられなかったが,Chl a 誘導体の変化は認められた.誘導体としてクロロフィリッド(Chlide)a,フェオホルビド(Pheide)a,C132-ヒドロキシクロロフィル(C132-OHChl)a,Chl a 異性体(Chl a')およびフェオフィチン(Phy)a が検出され,Chlide a,Pheide a,C132-OHChl a は高温処理中に減少した.一方,Chl a',Phy aは 増大が認められた.Chl 分解酵素活性では,特に Mg- 脱離活性が高温処理中に抑制された.
ブロッコリー花蕾を 15℃で貯蔵すると Chl a および b 含量は急減したが,高温処理されたものでは,貯蔵 6 日においても両 Chl 含量はほとんど減少しなかった.Chl 誘導体の貯蔵にともなう変化をみたところ,Pheide a は対照区,処理区とも増加したが,特にその傾向は処理区で顕著であった.対照区の Chlide a は貯蔵にともない急減したが,処理区ではほとんど変化が認められなかった.Mg- 脱離活性をみたところ,対照区において貯蔵 4 日から増大したが,一方,処理区では増大が認められなかった.
以上の結果から,高温処理されたブロッコリー花蕾では,Chl 誘導体,特に Pheide a が蓄積されることが明らかとなった.また,Mg- 脱離活性はクロロフィラーゼ,Chl 分解ペルオキシダーゼ活性とともに,貯蔵中の Chl 分解に関連しているものと思われ,さらに,高温処理はこれらのChl分解酵素活性を阻害することにより Chl 分解を抑制しているものと推察された.

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© 2007 園芸学会
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