Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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77 巻, 2 号
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原著論文
  • 中野 道治, 清水 徳朗, 國賀 武, 根角 博久, 大村 三男
    2008 年77 巻2 号 p. 109-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    多胚性は,カンキツ属において広範に分布するアポミクシス現象であり,カンキツの繁殖において重要な役割を果たす.本研究では,多胚性遺伝子座の正確なマッピングを行うために,‘清見’ב宮川早生’由来 F1 集団を用いて RAPD 法によるバルク化選抜を行った.1681 種類の EST 配列由来プライマーおよび 12 mer ランダムプライマーを用いて単胚性・多胚性バルク間でスクリーニングを行った結果,多胚性遺伝子座に連鎖する 5 個の RAPD マーカーを獲得し,その内 2 マーカーについては SCAR 化を行った.これらのマーカーは‘清見’ב宮川早生’連鎖地図において,多胚性遺伝子座との連鎖が示されている第 9 連鎖群上のマーカーと共に全長 47 cM からなる連鎖群を構成した.マーカー情報,系譜情報を基に多胚性遺伝子座近傍領域のハプロタイプ構造を推測したところ,‘宮川早生’から‘清見’に伝達された単胚性ハプロタイプは,多胚性遺伝子座近傍領域で組換えを起こしていると考えられた.本報告で明らかにされたマーカー情報およびハプロタイプ構造は,多胚性のマーカー選抜,ゲノム解析を行うための有用な知見となる.
  • 成 鈺厚, 荒川 修, 葛西 身延, 澤田 信一
    2008 年77 巻2 号 p. 115-121
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    4 年生のリンゴ樹を用いて,環状剥皮処理によって光合成速度が低下する要因を解析した.3 年生枝と 2 年生枝の短果枝と新梢における葉の光合成速度は,環状剥皮処理後 6 日目に,処理前に比べて 40–50% 低下し,同時に気孔コンダクタンスは処理前に比べて約 60%低下した.葉内,樹皮および木部におけるデンプン含量は大きく増加した.光合成速度と気孔コンダクタンスとの間に正の相関が認められた.細胞間隙 CO2 濃度には明らかな変化が見られなかった.一方,環状剥皮処理によって葉面積当たりの ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase(RuBPcase)の活性が低下したが,これは酵素量当たりの RuBPcase 活性の低下によるものと考えられた.新梢の葉面積当たりの RuBPcase の initial activity は特に著しく低下した.そして,光合成速度と葉面積当たりの RuBPcase の initial activity との間に正の相関が認められた.これらの結果より,環状剥皮処理によってシンク・リミット状態になったリンゴ若木の側枝上の短果枝葉と新梢葉における光合成速度の低下は,主に気孔の閉鎖と葉面積当たりの RuBPcase 活性の低下が原因であったことが推察された.
  • 村松 昇, 平岡 潔志
    2008 年77 巻2 号 p. 122-127
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    水の通導性は,植物体中の水の流れを表す重要な指標である.枝の相対的な水の通導性測定のため,単純化した測定装置を作製した.主要な温帯果樹 17 種について測定を行った結果,つる性樹(キウイフルーツおよびブドウ)で通導性の値が最も高く,次いで立木性の落葉果樹(クリ,ニホンナシ,モモなど),常緑果樹(カワノナツダイダイ,ウンシュウミカン)の順であり,ビワが最も低かった.通導性測定を行った果樹のうち 13 種について,光学顕微鏡を使って木部の観察を行い,画像から導管の径,数,導管面積を算出した.導管径は,つる性樹(キウイフルーツ,ブドウ)が最も大きく,次いでカキやクリの順であり,バラ科落葉樹(リンゴやウメなど)およびバラ科常緑樹(ビワ),カンキツ類で小さかった.水の通導性の値とハーゲンポアズイユの法則に従って算出した指標(Σr4/S)との相関係数は,枝の断面積当たりの導管面積との相関係数より高く,今回行った水の通導性測定の有効性が確認できた.
  • 江角 智也, 田尾 龍太郎, 米森 敬三
    2008 年77 巻2 号 p. 128-136
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ニホンナシおよびマルメロの花芽形成時の芽から摘出した微小な組織を用いて,シロイヌナズナの花芽形成関連遺伝子である LFY および TFL1 相同遺伝子の発現様式を調査した.調査は LFY および TFL1 それぞれ 2 種類ずつある相同遺伝子に対して 32 および 37 サイクルの RT-PCR によって行った.今回の分析条件では,ニホンナシおよびマルメロのそれぞれ 2 種類の LFY 相同遺伝子の発現様式に果樹種間および相同遺伝子間で違いはみられなかった.また,これら相同遺伝子の発現部位はこれまでの発現解析の結果とも一致していた.2 種類の TFL1 相同遺伝子はそれぞれの果樹種で異なる発現様式を示した.ニホンナシの芽では,未分化時に PpTFL1-1 PpTFL1-2 の両者が発現しており,花芽分化が開始すると PpTFL1-2 の発現はみられなくなり,PpTFL1-1 だけが継続して発現していた.一方,マルメロの芽では CoTFL1-1 のみが未分化時に発現しており,花芽分化が開始する前にその発現はみられなくなった.花芽分化開始とともにドーム状の茎頂部において CoTFL1-1 CoTFL1-2 の両者が発現し,その後,茎頂部が花原基へと発達するとそれらの発現は再びみられなくなった.ニホンナシの花芽分化開始後における PpTFL1-1 の継続的な発現は,その総状花序の形成に関与しているものと考えられた.さらに 2 種類の TFL1 相同遺伝子の発現様式の違いから,果樹種間および相同遺伝子間でそれぞれの相同遺伝子の役割が分化している可能性も考えられた.これら果樹種の花芽分化の誘導や花序の形態形成を理解する上で,TFL1 相同遺伝子は重要な遺伝子であると考えられた.
  • Choi Youn Jung, Yun Hae Keun, Park Kyo Sun, Roh Jeong Ho, Jeong Seok T ...
    2008 年77 巻2 号 p. 137-142
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ブドウ葉において Rhizobium vitis への抵抗性反応時に特異的に発現する遺伝子を探索する目的で,擬陽性クローンの出現を最小化するアニーリングコントロールプライマー(ACP)を用いた新規の RT-PCR を適用した.20 種の ACP を用い,病原菌感染時と非感染時で異なる発現を示す遺伝子(DEG)として 31 遺伝子を同定し,それらの塩基配列を決定した.BLAST 検索の結果,それらのうち 27 遺伝子は既知のものであった.その中の 6 遺伝子を選び,R. vitis 感染により特異的な発現を示すかを確認する目的で,半定量的 RT-PCR 解析を行った.得られた結果から,ACP 法はブドウにおける病害抵抗性特異的遺伝子の同定に有効な手法であることが示唆された.今後,病害抵抗発現の分子機構の解明のため,得られた DEG の解析を進めていく.
  • サルカー シャハナッツ, 切岩 祥和, 遠藤 昌伸, 小林 智也, 糠谷 明
    2008 年77 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本実験では,培養液施用システム(点滴および底面給液)と培養液組成(修正園試処方および静大処方,EC 4 dS·m−1 に調整)の組合せが高糖度トマトの生育,収量等に及ぼす影響を調査するために,2005 年 9 月から 2006 年 2 月に所定のシステムにて栽培を行った.生育,収量および果実サイズは,培養液組成にかかわらず底面給液システムで減少した.一方,可溶性固形物含量は,点滴給液より底面給液システムで,修正園試処方より静大処方でそれぞれ高かった.吸水量は,点滴給液に比較して底面給液で抑制された.培地のマトリックポテンシャルは,点滴給液より底面給液で高かった.培地溶液の EC は,点滴給液より底面給液で,また修正園試処方より静大処方で高かった.組み合わせ区では,底面給液×静大処方区で 29.6 dS·m−1 ともっとも高く,点滴給液×修正園試処方区で 16.1 dS·m−1 と最も低かった.葉中プロリン濃度は,11 月 7 日,12 月 2 日ともに培養液組成にかかわらず,点滴給液より底面給液において高かった.これらの結果から,底面給液における生育,収量の低下は,水ストレスではなく,主として塩類ストレスに起因するものと思われた.
  • 林田 信明, 高畑 裕理, 中沢 宣彦, 有賀 大輔, 中西 弘充, 田口 悟朗, 坂本 浩司, 松本 悦夫
    2008 年77 巻2 号 p. 150-154
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでに,ハクサイ根こぶ病抵抗性(CR)遺伝子座の一つ CRa に強く連鎖する RFLP マーカー HC352b が見いだされている.しかし,cDNA クローン HC352 の示す RFLP 像は複数の遺伝子座を反映した複雑なもので,利用が困難であった.そこで,育種に役立つ実用的な HC352b マーカーを開発するために,HC352 の関連遺伝子を解析し,SCAR マーカーの作成と評価を行った.まず,CRa を持つ倍加半数体(DH)系統と持たない DH 系統を用いた分析を行い,HC352 関連遺伝子群を見分ける制限酵素切断部位の模式図を作成した.次いで HC352 関連遺伝子群に由来するゲノム断片の解析によって CRa に連鎖する HC352b パラログの特定を行い,SCAR マーカーを設計した.さらに,F2 および BC1 世代個体の SCAR マーカー遺伝子型とそれらの自殖後代による根こぶ病検定の結果が一致し,作成したマーカーが実用的に利用できることが示された.
  • 高畑 健, 峯 洋子, 狩俣 貴清, 三浦 周行
    2008 年77 巻2 号 p. 155-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    春~夏播き用の計 14 品種のレタス種子を,培養土を詰めたセルトレイに播種し,温度を 20,30 および 35℃に制御した生育キャビネットに移し,高温下での出芽抑制の品種間差異を 6 日間調査した.その結果,出芽開始は,すべての品種で 20℃区では播種後 3 日,30℃区では播種後 2 日,また 35℃区では播種後 2~5 日であった.出芽開始日(35℃においては多くの品種が出芽を開始した日),出芽開始後 1 日および最終の出芽率は,それぞれ 20℃区では 52~97%,77~98%および 81~100%,30℃区では 7~66%,25~87%および 61~98%,35℃区では 0~43%,0~50%および 1~63%であり,30℃以上ではすべての品種の出芽が抑制され,品種間差が大きかった.高温下での出芽抑制程度と関連する出芽限界最高温度 T50 も品種による差が大きく,31℃の‘オリンピア’から 35 ℃を超える‘シャトー’,‘キングシスコ’および‘サクラメント’まで及んだ.35℃以上の品種は 30~35℃における出芽抑制程度が低かった.既報の発芽率と本実験の出芽率と対比させると,本実験においては 30℃以上における抑制程度が低い品種が多く,出芽限界最高温度が高い品種が多かった.
  • 加納 恭卓
    2008 年77 巻2 号 p. 160-164
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    キャベツ,ホウレンソウなどの葉菜類の糖含量は栽培される条件により大きく影響される.植物器官の糖含量は栽培条件により糖代謝が影響され変動することは多くの研究により明らかにされている.一方,メロン果実で果肉細胞の大きさと糖含量が密接に関連していることも明らかにされている.そこで,窒素施与量を変えて,あるいは温度が異なる時期に栽培したキャベツの葉肉細胞の大きさと葉中の糖含量を比較検討した.窒素成分を標準の半量施与し栽培したキャベツでは,細胞の大きさは 51.7 μm と標準区より 3.4 μm 小さくなり,グルコースは 16.2 mg·g−1 FW およびフラクトースは 9.9 mg·g−1 FW と標準区よりそれぞれ 2.6 mg·g−1 FW および 2.0 mg·g−1 FW 大きくなった.冷温時期に栽培し 11 月に採取したキャベツの葉肉細胞の大きさは 51.5 μm で,高温時期に栽培し 7 月に採取したものより 7.2 μm 小さくなり,グルコースは 11 月が 7 月より 5 mg·g−1 FW 大きい 17 mg·g−1 FW,フラクトースは 11 月が 7 月の約 2 倍の 15 mg·g−1 FW であった.このように,窒素施与量を小さくしたり,冷温条件下で栽培したりすると葉肉細胞が小さくなる結果,糖含量が多くなることが示された.
  • 齋藤 岳士, 福田 直也, 飯窪 拓也, 稲井 修二, 藤井 崇, 小西 千秋, 江面 浩
    2008 年77 巻2 号 p. 165-172
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    土耕における根域容量制限処理と高塩濃度液肥処理(塩ストレス処理)が加工用トマトの果実品質ならびに収量に及ぼす影響を,灌水同時施肥栽培において露地条件と温室ポット栽培試験で評価した.露地試験の場合,液肥の EC を 5 dS/m と設定したところ,可溶性固形物濃度と GABA 含有量に明確な差違は確認できなかった.一方,ハウス内で実施したポット栽培試験では,塩ストレス処理によって可溶性固形物濃度と GABA 含有量が,それぞれ平均で対照区よりも 57 ならびに 22%増大した.また,露地試験で液肥の EC が 7 dS/m の塩ストレス処理区ならびに土壌 pF 値の上限を 2.7 とした水ストレス処理区を設定したところ,いずれの処理区でも可溶性固形物濃度が 6.9 と対照区の 5.7 よりも 21%上昇した.しかしながら,露地条件での塩ストレスは GABA 含有量を高める効果は確認できなかった.防根シートにより培地容量を 16 L から 26 L に制限した根域容量制限処理は,可溶性固形物濃度と GABA 含有量に影響しなかった.しかし,1 L と 6 L に根域を制限した場合,特に塩ストレス環境下では,可溶性固形物濃度ならびに GABA 含有量が増加する傾向が示された.また,根域容量制限は,地上部,特に側枝の伸長を抑制し,かつ収穫果実数を減少させた.
  • 武 占会, 丸尾 達, 篠原 温
    2008 年77 巻2 号 p. 173-179
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    培養液の総窒素(N)濃度がニラ(Allium tuberosum Rottler ex Spreng.)の株養成時の生育と養分吸収に及ぼす影響を明らかにするために,DFT 栽培システムを用い,株養成期間における 4 つの N 濃度(N3: 3 me/L,N6: 6 me/L,N12: 12 me/L と N24: 24 me/L,NO3-N : NH4-N = 2 : 1)を設け,実験を行った.本実験では,N3 区の乾物重が最も大きく,0.70 g/plant の乾物重が得られた.培養液の総窒素濃度の上昇に従って,乾物重および P,K,Ca,Mg の吸収量は減少する傾向がみられた.本実験条件下(NO3-N : NH4-N = 2 : 1)では,N3 区における乾物重が他の処理区よりも多かったことから,ニラ養液栽培における株養成時の好適な培養液の総窒素濃度は 3 me/L であると考えられた.この培養液総窒素濃度にした時,乾物 1 g 当たり NH4-N,NO3-N,P,K,Ca,Mg の吸収量は 28.6,36.6,8.2,55.2,10.8,2.7 mg であった.また,N24 区の乾物 1 g あたりの NO3-N 吸収量は N3 区のそれと,ほぼ同じ値であったが,NH4-N 吸収量については 71.7%増加した.このことから,本実験条件下では,培養液の総窒素濃度の上昇にともなう乾物重の顕著な減少の原因は NH4-N の過剰施用,過剰吸収により引き起こされた NH4-N による障害であったと推測された.
  • 齋藤 弥生子, 今川 正弘, 矢部 和則, Bantog Nancy, 山田 邦夫, 山木 昭平
    2008 年77 巻2 号 p. 180-185
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    夏季の促成イチゴ高設栽培において,空中に垂れ下がったランナー子株を利用した挿し苗育苗のための実用的な手法として,イチゴ‘とちおとめ’のランナー子株の低温による発根促進効果を検討した.温度条件を変えて 7 日間挿し苗を栽培したところ,発根数は 15℃,20℃,25℃で多く,5℃の低温および 30℃の高温では明らかに減少した.挿し苗の発根に対する至適温度には,品種により違いが認められた.一方,挿し苗を 5℃で 2 日間処理し,その後,30℃で 5 日間栽培したところ,その発根状態は 5℃で処理せず,15℃で 7 日間栽培した場合と同様であった.また,発根は茎葉や茎頂を除去したクラウンのみを 5℃で 2 日間栽培しても観察され,16 時間日長条件下よりも暗黒条件下の方が良好であった.さらに,発根状態はランナー子株の葉数が 2.5 葉になった時に最も良好であった.以上の結果より,発育段階が 2.5 葉のランナー子株を切り出し,5℃の暗黒条件下で 2 日間処理した後,挿し苗を行うことが夏季の発根には好ましいことが明らかになった.
  • 小林 伸雄, 山下 幸穂, 太田 勝巳, 細木 高志
    2008 年77 巻2 号 p. 186-191
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    サルビアの倍数体の作出ならびに形態的変異とその遺伝性の調査を行った.サルビア種子へのコルヒチン処理は,発芽率に対して強い影響を及ぼさなかったが,子葉展開前後に生育停止し枯死する実生が多くみられ,本葉展開に至る実生は処理濃度が濃くなるほど少なくなった.本葉展開率が 0 ppm に対して半減するコルヒチン処理濃度は,Salvia coccinea ‘コーラルニンフ’では 500 ppm,‘レディインレッド’では 250 ppm,S. patens ‘ブルーエンジェル’では 750 ppm で種や品種による違いがみられた.S. coccinea ‘コーラルニンフ’ではコルヒチン 500 ppm を最適処理濃度として,種子 50 粒に処理し播種・育成したところ,発芽後,順調に生育した実生は 12 個体で,このうち 7 個体で 4 倍性が確認されたほか,2~4 倍性および 4~8 倍性のキメラ個体がそれぞれ 1 個体ずつ得られた.4 倍性個体では葉が大きく厚くなったほか,花器および花序全体が大型化し,観賞価値が高まった.大半の 4 倍性個体は染色可能な花粉を有し,4 個体からは自殖種子が採種可能であった.この種子から得られた 2 代目実生 18 個体はすべて 4 倍性に安定し,花および葉の形態も親同様に大型化していることがわかった.
  • 河鰭 実之, 中條 宛宜
    2008 年77 巻2 号 p. 192-198
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    トルコギキョウ花弁における全窒素含量および遊離アミノ酸含量の開花・老化にともなう変化を鉢植えで調べるとともに,開花時におけるこれらの含量を,スクロースを加えた切り花(+Suc),加えない切り花(−Suc),鉢植え(Pot)間で比較した.全窒素含量は,花の発達にともないしだいに低下した.遊離アミノ酸の HPLC 分析により Asp, Glu, Asn, Gln, Ser, Phe, Gly, Thr, Ala, Tyr,および Val が検出された.Gln 含量は花の発達期間全体を通して高く,Asn 含量は老化時に著しく増加した.その他のアミノ酸は含量が低くかったが,−Suc 区では花の発達が劣り乾物率が低かった.花冠当たりに含まれる全窒素量は,各区間に差は認められなかった.そのため −Suc 区では乾物あたりの窒素含量が高くなった.この −Suc 区では Gln と Asn の顕著な蓄積がみられた.+Suc 区では新鮮重あたりおよび乾物重あたりの窒素含量が,Pot 区よりやや低かったが,日持ちには Pot 区と差はみられなかった.
  • 菊地 郁, 石井 里美, 藤巻 秀, 鈴井 伸郎, 松橋 信平, 本多 一郎, 宍戸 良洋, 河地 有木
    2008 年77 巻2 号 p. 199-205
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ポジトロンイメージング装置(PETIS)を用いて,光合成産物がナス植物体の葉から果実内部へと移行する様子を計測した.100 MBq の 11CO2 を第 2 果実直下の第 7 葉に与え,[11C]光合成産物が移行する様子を 10 秒ごとに 180 分間撮像した.[11C]光合成産物が葉から茎を通って下部と果実に移行する様子が観察された.さらに果実内部における[11C]光合成産物の移行過程の撮像にも成功した.果実内における[11C]光合成産物の移行は一様ではなく,偏りがあることが観察された.詳細に観察するため,測定後の果実をスライスしオートラジオグラフィーによって 11C 活性を検出した.果実内における 11C に局在性が認められたため,光合成産物の果実内おける移行は一様ではなく偏りがあると考えられた.また,得られた連続画像上の果実全体部分を関心領域として 11C 活性の経時変化をプロットし,光合成産物の到達時間を推定した.その結果,光合成産物は葉から果実に 1 時間前後で到達していると考えられた.また全 11C 施与量に対する果実への移行量は 120 分後で,およそ 8%と推定された.さらに果柄上にも関心領域を 2 点設けて 11C 活性変動をプロットし,そのプロットに対して伝達関数法によるフィッティングを行うことで光合成産物の転流速度を算出した.果柄における転流速度はおおよそ 1.17 cm·min−1 と推定された.PETIS 計測は光合成産物の移行過程を非破壊かつリアルタイムで計測できるほか,植物体内での分配を可視化できる利点がある.果実内部における光合成産物の移行過程を観察した例はこれまでなく,今後果実発達や成熟過程を理解する上で非常に有効な手段であると考えられる.
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