抄録
養液栽培におけるアンモニア態窒素施肥量がニラ(Allium tuberosum Rottler ex Spreng.)の生育と養分吸収に及ぼす影響を明らかにするために,定植後の栽培から収穫期間において,かけ流しシステムを用い,排液を全量回収・分析して養分吸収を正確に評価する実験を行った.積算日射量 1 MJ/m2 毎に 1 回給液し,毎回給液する NH4-N 施肥量を 7 レベル(0, 5, 11, 21, 42, 84, 168 μg/plant/MJ)設けた.NH4-N 施肥量の増加にしたがい,K,Ca および Mg 吸収量は減少した.一方,NH4-N 施肥量の増加にしたがって,NH4-N 吸収量は増加したが,NO3-N 吸収量はほぼ一定であった.NH4-N 吸収量と NH4-N 施肥量との間には収量漸減法則に合致する顕著な正の相関関係がみられた.0~84 μg/plant/MJ の NH4-N 施肥量においては,NH4-N 施肥量の増加にしたがって,ニラの収量は増加した.NH4-N 施肥量が 84 μg/plant/MJ の時にニラの収量が最大となった.この時の NH4-N, NO3-N, P, K, Ca および Mg の吸収量はそれぞれ 10.7, 14.6, 6.0, 22.5, 3.3 および 2.0 mg/plant であった.しかし,NH4-N 施肥量をさらに 168 μg/plant/MJ とすると,ニラの収量は顕著に減少した.前報の養分吸収と本報の結果を比較した結果,ニラ体内の NH4-N 吸収量が,乾物 1 g 当たり 33~35 mg 以上になると,NH4-N の過剰吸収で,生育障害を起こすものと推察した.このことから,NH4-N については培養液の濃度よりもニラの吸収量が重要であると考察した.