Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
カキ‘富有’と‘太秋’の交配で得られた不完全種子の胚培養による九倍体作出
千々和 浩幸桑原 実平川 信之鉄村 琢哉
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2008 年 77 巻 4 号 p. 358-363

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抄録

六倍体完全甘ガキである‘富有’と‘太秋’を交配して得られた不完全種子を胚培養して,その倍数性を明らかにするとともに,その由来を検討した.得られた種子は 1078 個で,うち不完全種子数は総数の 6.3%にあたる 68 個であった.不完全種子を胚培養した結果,発芽したものは 10 個体で,うち 2 個体は成長点がない異常胚で,いずれも九倍体であった.一方,正常胚の 8 個体はすべて六倍体であった.カキの品種識別のための 4 種類の SSR プライマー(D.CT-13,24,61 および 179)を用いて親子分析を行った結果,この九倍体実生は‘富有’あるいは‘太秋’に特有なアリルのみを持っていることから,有性倍数化によって発生したことが示された.D.CT-61 では,いずれの九倍体実生にも‘太秋’に特有なアリル(222 bp)が検出された.一方,九倍体実生には D.CT-179 における‘富有’に特有なアリルの一部(136,140 bp)が検出されなかった.これらのことから,得られた九倍体実生は‘富有’の還元配偶子と‘太秋’の非還元配偶子の接合によって生じた可能性が示唆された.

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© 2008 園芸学会
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