Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
アジサイ茎頂分裂組織近傍における表在性微生物相の同定と除去
北村 嘉邦細川 宗孝田中 千尋矢澤 進
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2008 年 77 巻 4 号 p. 418-425

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抄録
In vitro 培養時に高頻度で微生物汚染が起こる植物種がある.アジサイ(Hydrangea spp.)も in vitro 培養時に高頻度で微生物汚染が起こる.本実験ではアジサイ茎頂分裂組織(SAM)近傍における微生物相を細菌の 16S リボソーム DNA(16S rDNA)の塩基配列を解析し,同定した.アジサイ園芸品種 8 品種の SAM 近傍に存在する微生物種の 16S rDNA は 12 の微生物種の 16S rDNA と高い相同性を示した.ただし,各アジサイ品種とも複数回単離された微生物種は一部にとどまったこと,また,ここでは Nutrient Broth 培地上で生育可能な微生物種のみを解析の対象としたため,アジサイの SAM 近傍に存在する微生物種の全てを網羅しているわけではない.実験 2 では‘Miss Hepburn’を用いて SAM の殺菌に必要な殺菌液の有効塩素濃度を決定した.SAM を露出した上で有効塩素濃度 0.0005%から 0.5%の各殺菌液に 30 分間浸漬した場合,有効塩素濃度 0.05%以上の殺菌液を用いることで茎頂培養時の微生物汚染を抑えることができた.アジサイ in vitro 培養時に微生物汚染を引き起こす微生物種は表面殺菌によって除去可能であることから,内生菌ではなく表在性菌であると考えられた.実験 3 ではアジサイ in vitro 個体を得る方法を検討した.その結果,葉原基を 2 対残してすべて除去したシュートを有効塩素濃度 0.05%の殺菌液に 30 分間浸漬することで,供試した 8 品種のうち 7 品種について培養した 20 個の茎頂から 5 個体から 19 個体の in vitro 植物体を得ることができた.‘Flambeau’は SAM が殺菌処理時に塩素による薬害を受け,in vitro 植物体を得ることができなかった.塩素感受性が高い SAM を持つ品種については殺菌液の有効塩素濃度を再検討する必要がある.得られた in vitro 植物体は培養開始から 130 日後にも微生物汚染は認められず,培養容器外へと移植可能な大きさに成長した.SAM の表面殺菌は in vitro 培養時に微生物汚染が問題となる他の植物種にも応用可能であろう.
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© 2008 園芸学会
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