Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
あんぽ柿製造中に発生する褐変のメカニズム
山田 寿安藤 友美津谷 健太天野 勝司山本 善彦
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2009 年 78 巻 1 号 p. 124-130

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抄録
半乾燥柿であるあんぽ柿の製造中に発生する褐変のメカニズムを解明するため,酵素的および非酵素的褐変に関連するいくつかの成分を調査した.‘愛宕’の褐変は水分含量が約 50%以下になると発生し始め,手もみ処理は乾燥と褐変を促進した.ポリフェノール含量は褐変が生じる前の最初の 7 日間で急激に減少した.ポリフェノール酸化酵素活性は乾燥中徐々に低下し,乾燥 + 手もみ区が乾燥区よりも低く推移した.アスコルビン酸は乾燥中減少したが,乾燥 + 手もみ区の方が減少割合は大きかった.デヒドロアスコルビン酸は中期にやや停滞したが,乾燥中徐々に減少し,後半には乾燥 + 手もみ区の方が低かった.アスコルビン酸の非酸化的分解産物であるフルフラールは乾燥 + 手もみ区と乾燥区でそれぞれ 4 日目と 10 日目から増加した.果糖とブドウ糖はショ糖の急減にともなって最初の 4 日間で急増し,乾燥 + 手もみ区が乾燥区より高く推移した.アミノ酸含量は乾燥中徐々に減少し,処理区間に差は認められなかった.果糖から褐変物質が生成される際の中間物質とされるヒドロキシメチルフルフラールは乾燥中減少し,その減少割合は乾燥 + 手もみ区の方が大きかった.以上の結果から,‘愛宕’のあんぽ柿の褐変にはアスコルビン酸の酸化的および非酸化的分解経路が主に関与しており,酵素的褐変やメイラード反応はあまり重要な役割を果たしていないことが示唆された.
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© 2009 園芸学会
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