2009 年 78 巻 1 号 p. 49-54
これまでに得られているニホンナシ‘巾着’の黒星病抵抗性(Vnk)に連鎖する 5 種類の DNA マーカーの実際の育種における有効性について,‘巾着’を親に含む4系交雑で得られた 2 集団におけるマーカーの有無と接種試験結果との比較を行うことで検証した.‘巾着’の抵抗性に連鎖した DNA マーカーと病徴程度との関連について調査した結果,‘巾着’由来の STS-OPW2~STS-OPO9 の領域を持たない個体は,全て葉に胞子形成をともなう著しい病徴(罹病性)を示した.反対に,これらの領域が‘巾着’型の個体では無病徴(高度抵抗性)のもの以外に,退緑斑や壊死斑などの抵抗性反応(抵抗性)や葉柄にわずかな胞子形成(中度抵抗性)を示す個体がみられるものの病徴は総じて軽微であった.これらのことから,‘巾着’の Vnk の導入を目的とした育種においては,STS-OPW2 と STS-OPO9 の両方を持たない個体を罹病性と判断し淘汰することで,集団の個体数を減少させ育種効率を高めることが可能であると考えられた.