抄録
バラ科果樹の多くは配偶体型自家不和合性を示し,栽培や育種を行う上で大きな障壁となっている.過去 10 数年間に行われた研究によって,バラ科果樹の不和合性反応の雌ずい側および花粉側の特異性を決定する雌ずい S 遺伝子と花粉 S 遺伝子が同定され,さらにこれら遺伝子の多型に基づいた S 遺伝子型の判別法が開発されてきた.また自家和合性品種の分子レベルでの解析から,自家和合性品種の多くで,雌ずい S 遺伝子と花粉 S 遺伝子のいずれかに変異が生じていることも明らかになり,自家和合性個体判別のための分子マーカーも開発されてきた.本総説では,バラ科果樹の自家不和合性研究および自家不和合性分子マーカーを用いた S 遺伝子型判別の現状と自家和合性分子マーカーの開発状況について紹介した.