抄録
シーベリー(Hippophae rhamnoides L.)の亜種である mongolica と rhamnoides に属するそれぞれ‘Russian Orange’と‘Hergo’の 2 品種を用い,果実の発育を通した糖含量と滴定酸度の変化を比較,検討した.‘Russian Orange’では,果実のグルコース含量は 7 月中旬から 8 月上旬にかけて増加したが,フルクトース,スクロース,エチルグルコース含量は増加しなかった.‘Hergo’では,果実の発育を通して各糖含量は増加しなかった.果実の滴定酸度は,両品種において,発育初期には低く,7 月中旬から 8 月上旬にかけて顕著に増加し,収穫期には低下した.成熟果の糖酸比は,‘Russian Orange’で 1.14,‘Hergo’で 0.34 であったことから,‘Russian Orange’の方が食味に優れていた.14CO2 を用いたトレーサー実験の結果,14C-スクロースが葉および茎の主要な糖として検出されたことから,シーベリーではスクロースが主要な光合成産物として転流することが示唆された.果実のアスコルビン酸含量は,‘Russian Orange’では果実の発育とともに減少したが,‘Hergo’ではほぼ一定していた.シーベリー果実は高い L-ガラクトース脱水素酵素活性を示し,トレーサー実験において L-14C-ガラクトースおよび D-14C-マンノースから 14C-アスコルビン酸を生成した.したがって,シーベリー果実では,マンノース/L-ガラクトース経路がアスコルビン酸の合成に寄与していることが示唆された.