Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
フローサイトメトリーならびに SSR マーカーによるポットカーネーションの倍数性および育種的背景の推定
八木 雅史木村 鉄也山本 俊哉小野崎 隆
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2009 年 78 巻 3 号 p. 335-343

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抄録
ポットカーネーション 45 品種について,フローサイトメトリーにより倍数性を推定した結果,27 品種が二倍体,3 品種が三倍体,15 品種が四倍体と推察された.実際の倍数性を確認するためにそれぞれの倍数性から 1 品種ずつ根端細胞の染色体数を観察した結果,‘カミーユ’は二倍体,‘ベイビーハート’は三倍体,‘トゥーラ’は四倍体であることが明らかになった.このことからポットカーネーションには倍数性の異なる品種が多数存在することが示された.5 種類の SSR マーカーを用いて,ポットカーネーション 32 品種の遺伝子型を調査し,倍数性ならびに遺伝的多様性を推察した.各遺伝子座に検出されたアリル数から倍数性を推定した結果,二倍体と三倍体についてはフローサイトメトリーの結果と一致したが,四倍体では一致しなかった.SSR 解析の結果,二倍体のポットカーネーションでは一遺伝子座当たりのアリル数は 3~4 種類と少なく,二倍体の切り花用品種と共通するアリルが多かった.一方,三倍体や四倍体のポットカーネーションには倍数体特異的なアリルが複数存在し,一遺伝子座当たりのアリル数も 4~8 種類と多かった.このことから二倍体品種は切り花用品種に由来すること,三倍体や四倍体の倍数体品種は野生種などの切り花用品種以外の育種素材から育成された可能性が示唆された.今回使用した 5 種類の SSR マーカーで倍数性の異なる品種を含む 30 品種を識別することが可能であった.
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© 2009 園芸学会
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