抄録
開花期のスイートピーにおける乾物分配の動態に関するダイナミクスモデルを構築した.各花序への乾物分配量は花序の乾物重と相対生長率との積に比例するとした.各花序に分配される乾物の総量が一定であると仮定した場合をシミュレートすると,花序の乾物重の変動はすみやかに収束した.これに対して,各花序に分配される乾物の総量が日々変化すると仮定した場合,花序の乾物重の変動は収束することなく長期間続いた.これらのシミュレート結果から,同化量の変化が小さいほど,乾物分配パターンが安定し,着蕾数の変動幅も小さくなると仮説を立てた.そこで,同化量安定化の手段として終夜補光処理を行い,着蕾数安定化生産を試みた.PPFD80 μmol·m−2·s−1 の終夜補光処理は乾物生産に有効であった.曇雨天日の終夜補光処理は,着蕾数の変動を抑えることはできなかったが,落蕾を防止し,収穫した切り花 1 本当たりの着蕾数の変動を抑制する効果があった.