抄録
韓国ソウル市の新築マンションに居住している 82 所帯を対象に,屋内植物が化学物質過敏症(sick building syndrome: SBS)に及ぼす効果について 2 回の観察期間を設けて調査した.今回の研究でヤツデの鉢植えを入れた密閉チャンバー内のホルムアルデヒド量は減少することが確認された.屋内植物は相対湿度の上昇,一酸化炭素や二酸化炭素の減少といった全般的な空気環境に効果があった.SBS を引き起こすような毒性化学物質は少なくとも 1 年以上残留するが,それは換気によって効果的に減少する.屋内植物は屋内の空気中に存在するこれらの化学物質量を減少させる.いずれの観察期間においても,居住者は屋内植物の有無にかかわらず時間の経過とともに SBS の症状が治まることを感じた.屋内植物は最初の観察期間においては SBS 症状の程度にわずかな違いしかもたらさなかったが,2 回目の観察期間においては有意な違いをもたらした.屋内植物は SBS 症状の軽減といった好ましい結果をもたらしたものの,ホルムアルデヒドを除く他の毒性化学物質の量に関してはやや異なる結果を与えた.