抄録
ダイコンの内部褐変症の発生と木部柔細胞の大きさとの関係をみるため,3 種類の実験を行った.実験 I では市販 5 品種を用いて障害発生の品種間差と木部柔細胞の大きさとの関係を調査したが,障害が発生しにくい品種の平均細胞径は障害易発生品種のものに比べて 39~45%程度小さかった.実験 II では障害が発生しやすい市販 3 品種と‘源助’にこれら品種を交配して得られた F1 品種を用いて障害発生と木部柔細胞の大きさとの関係を調査した.その結果,F1 品種は市販品種に比べて障害の発生が少なく,また,平均細胞径が 26~39%程度小さかった.実験 III では植物成長調節物質の施与が障害の発生や細胞の大きさに及ぼす影響を調査した.その結果,生育中期にジベレリンを施与すると障害発生が抑えられ,この場合,平均細胞径が無施与の対照区より 27~47%程度小さかった.以上より,内部褐変症の発生は木部柔細胞の大きさが密接に関与し,小さな木部柔細胞からなるダイコンでは障害が発生しにくいものと思われた.