Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
低気温制御下での台木胚軸への加温処理を用いたキュウリ断根接ぎ木苗の養生管理
渋谷 俊夫
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2010 年 79 巻 1 号 p. 64-68

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抄録

キュウリ断根接ぎ木の養生管理の一部として,気温 12℃の低温庫において台木胚軸への加温処理を行った.加温処理は,接ぎ木した挿し穂の台木下端部から接ぎ木接合部までを 31℃に温めた水に浸けることで 2 日間行った.加温処理した挿し穂を培地に挿し木して,養生用チャンバーで 5 日間育成した.対照区として,断根接ぎ木直後に培地に挿し木して 7 日間チャンバーで育成する試験区も設けた.対照区の穂木生体重は,含水率の低下にともなって接ぎ木後 2 日間で低下したが,加温処理した試験区ではそのような低下はみられなかった.加温処理した試験区の穂木生体重および乾物重は,接ぎ木 7 日後において対照区のそれぞれ 2.2 および 1.6 倍であった.接ぎ木接合部の癒合強度は加温処理した試験区において対照区と同様に推移した.穂木の葉面コンダクタンスおよびクロロフィル蛍光パラメータ Fv/Fm は,接ぎ木 7 日後において加温処理した試験区で対照区よりも大きかった.加温処理した試験区で葉面コンダクタンスおよび Fv/Fm が高かったのは,低気温制御下において養生初期の水ストレスが軽減されたことを意味する.これらの結果から,加温処理によって接ぎ木後の初期成長を高めることができたのは,養生初期において接合部の癒合が対照区と同様に進み,さらに低気温制御下で穂木の水ストレスが軽減されたためと考えられる.

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© 2010 園芸学会
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