Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
10 種の観賞植物を用いた屋上緑化植物としての成長と緑被率の評価
千藤 貴博金地 通生宇野 雄一稲垣 昇
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2010 年 79 巻 1 号 p. 69-76

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抄録

屋上緑化は都市緑化の手段の一つであり,環境面,経済面,景観面など多岐にわたって有益である.浅い軽量地盤による省力的屋上緑化では,夏期の高温,乾燥,強風,強日射によって植物の成長が妨げられる.本研究では夏期の屋上緑化に適する植物を検討するために,10種の観賞植物(エボルブルス,イチゴ,ヘデラ,マツバギク,ジャノヒゲ,ゼラニウム,ペチュニア,タイム,宿根バーベナ,ツルニチニチソウ)を深さ 10 cm の軽量培養土を用いて 4 階屋上で栽培試験を行い,成長の指標として植物による被覆面積(緑被率),環境耐性の指標として切除葉片の光合成能力と栽培環境下での気孔コンダクタンス,植栽部の温度を測定することにより利用適合性を評価した.タイム,エボルブルス,ペチュニア,イチゴは高温期でも短期間で緑被率が増加し(タイム 90%,エボルブルス 65%,ペチュニアとイチゴは 60%),夏場の屋上緑化に適する植物種であると評価した.タイムとイチゴはエボルブルスやペチュニアと違い,半乾燥状態で比較的低い気孔コンダクタンスを示し,水分を有効利用できるのに加えて,永年性で毎年定植の必要もない.エボルブルスは葉温40℃でも高い光合成能力を示した.ペチュニアとバーベナは夏期の着花は旺盛であったが,約 60%の緑被率を維持したものの成長は停滞気味であった.マツバギクは高温乾燥耐性が著しく強いが,成長は非常に緩慢であった.ツルニチニチソウとゼラニウムは高温と強風によるストレスにより枯死し,薄層地盤で省力的に管理を行う屋上緑化には適合種ではないと評価した.夏の夜間に,全ての植栽区はコンクリート表面よりも温度が 6~8℃低くなり,夏期の屋上緑化は建物の昼間の吸熱による温度上昇を抑え,冷房エネルギーの削減に効果が大きいことが推察された.

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© 2010 園芸学会
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