抄録
カーネーション切り花では,高温が自己触媒的エチレン生成の誘導と花弁の萎れを阻害することが示されている.本研究では,自己触媒的エチレン生成がすでに誘導されているカーネーション切り花において,高温がエチレン生成と花弁の萎れに及ぼす影響について解析した.外生エチレン処理によりエチレン生成を誘導した切り花を高温条件下(38℃)に移した結果,自己触媒的エチレン生成の上昇が抑制された.また,極大値のエチレンを生成しているカーネーション切り花に高温を処理した結果,エチレン生成が顕著に抑制された.これらの切り花の花弁では,ACC 合成酵素(ACS)および ACC 酸化酵素(ACO)の活性が低下しており,特に ACS 活性は顕著に抑制されていたが,花弁の萎れの進行は抑制されなかった.これらの結果は,自己触媒的エチレン生成が誘導された後の切り花においては,高温処理はエチレン生成を抑制するが,花弁の萎れは抑制しないことを示している.