抄録
変異型カーネーションエチレン受容体 Dc-ETR1nr をトレニアに遺伝子導入した.これはカーネーションエチレン受容体 Dc-ETR1 において Pro36 が Leu36 になるようにミスセンス変異を含んでおり,この変異はトマトの Nr 変異体と同様である.トレニアにアグロバクテリウム法による遺伝子導入を行い,Dc-ETR1nr 変異体系統を 4 系統得た.リアルタイム RT-PCR 解析により,全ての組換え体で Dc-ETR1nr mRNA の発現が確認された.野生型と ACO 組換え体トレニアはエチレン処理後に花弁の脱離が見られたが,全ての Dc-ETR1nr 組換え体では花弁の脱離は見られなかった.傷害処理およびエチレン処理後の花持ちは Dc-ETR1nr 組換え体が野生型よりも長かった.傷害処理および授粉処理後の自己触媒的エチレン生成量は野生型よりも低かった.これらの結果から,Dc-ETR1nr 組換え体トレニアはエチレン感受性が低下し,老化と自己触媒的エチレン生成が抑制されたと考えられる.