Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ウメ‘南高’樹体の水分ストレスの時期が炭水化物含量および生育に及ぼす影響
土田 靖久根来 圭一菱池 政志
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2011 年 80 巻 1 号 p. 19-25

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抄録
水分ストレス開始時期の影響がウメ‘南高’の炭水化物含量および生育に及ぼす影響を調査した.5 月(春季処理)と 8 月(夏季処理)にそれぞれ 3 ヶ月間の水分ストレスを施し,ストレス処理が終了したら直ちに灌水を行った.春季および夏季処理の樹体の根のデンプン濃度は,ストレス開始から 2 ヶ月後に上昇した.春季処理樹では処理終了後の灌水を始めると,速やかにデンプン濃度が低下した.一方,夏季処理樹では灌水してもデンプン濃度は上昇を続けた.この差は,樹体の炭水化物の需要量が季節によって変化することによるものと考えられた.翌年 2 月の樹体の組織別乾物重は,水分ストレスにより小さくなり,特に春季処理樹で著しく抑えられた.これは,ウメの樹体が春季に強度の水分ストレスを受けると,夏季にストレスを受けるよりも生育が著しく抑えられ,灌水を再開しても,生育を回復しないことを示唆している.水分ストレスを受けた樹体の各組織の 2 月における全デンプン含量はストレスを受けていない樹体に比べて著しく少なかった.これらの結果から,ウメ樹体が 3 ヶ月間の強度の水分ストレスを受けると,当年の生育が抑制されるだけでなく,次年の生育に必要な貯蔵炭水化物量の蓄積も抑制されることが明らかとなった.以上のことから,回復不能な生育低下を回避するためには,ウメ樹体が過度の水分ストレスに遭遇しないように,十分な灌水管理が必要である.特に生育ステージ初期に当たる春季の灌水が重要である.
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© 2011 園芸学会
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