Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
濃硫酸処理とマトリックプライミング処理が種子繁殖型 F1 イチゴ(Fragaria × ananassa Duch.)種子の発芽に及ぼす影響
伊藤 善一丸尾 達石川 正美篠原 温
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2011 年 80 巻 1 号 p. 32-37

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抄録

種子繁殖型 F1 イチゴ品種の実用化には,種子の高い発芽率と発芽の斉一性が求められている.種子繁殖型 F1 イチゴ種子の発芽パフォーマンスの向上を目的に,濃硫酸処理および濃硫酸処理に引き続くマトリックプライミング処理がイチゴ種子の発芽に及ぼす影響について検討した.‘とちおとめ’の自然受粉種子と種子繁殖型 F1 イチゴ品種‘千葉 F-1 号’種子を材料として用いた.温度反応性については,自作した温度勾配発芽試験装置を用いて,18~32℃ の連続した温度条件下で発芽試験を行った.濃硫酸処理のみでも‘とちおとめ’の自然受粉種子の発芽率は大幅に向上し,24~27℃ の温度条件下では,播種後 7 日で 83%以上の発芽率を示した.さらに濃硫酸処理に引き続いて,水ポテンシャルを −1.5 MPa に調整したバーミキュライト微粉末を用いて,25℃ 恒温条件で 12 日間マトリックプライミング処理を行うことにより,18~32℃ の広範囲の温度条件下で,82%以上の発芽率と発芽速度の向上を示した.次に,実際に育成した種子繁殖型 F1 イチゴ‘千葉 F-1 号’種子を用いて,最適濃硫酸処理時間について調べたところ,35 分で発芽率 84%を示した.また,濃硫酸処理に引き続くマトリックプライミング処理の期間を,0 から 14 日まで延長するに従い,発芽速度および発芽の斉一性が向上した.以上の結果から,濃硫酸処理さらにはそれに引き続きマトリックプライミング処理を行うことにより,種子繁殖型 F1 イチゴ‘千葉 F-1 号’種子の発芽パフォーマンスは実用可能なレベルまで向上した.

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© 2011 園芸学会
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