Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
イチゴにおける四季成り性の品種間差異および選抜指標
本城 正憲片岡 園由比 進森下 昌三矢野 孝喜濱野 恵山崎 浩道
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2011 年 80 巻 1 号 p. 38-44

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抄録
同一環境下において四季成り性イチゴ計 31 品種・系統を栽培し,それらの春から秋における花房数,小花数,開花日を調査することで,四季成り性イチゴにおける開花パターンの品種間差異や選抜指標について考察した.花房数や小花数などの形質において有意な品種間差異が認められ,四季成り性の強弱に関わる形質には遺伝的変異が存在することが示された.これら四季成り性の強弱には,品種の系譜が関係していることが示唆された.すなわち,‘大石四季成’に由来する品種は,‘夏芳’や Fragaria virginiana ssp. glauca に由来する品種に比べ,春季の花房(前年に分化した花房)と夏季の花房(当年に分化した花房)の間の葉数が少なく,夏季の花房が早く開花し,春季~秋季までの合計花房数が多い傾向が認められた.また,一季成り性品種の春季における開花の早晩性もその子孫である四季成り性品種の早晩性に影響し,晩生型より早生型の一季成り性品種を交配親として用いた方が,四季成り性の強い品種を育成しやすい可能性が考えられた.これらの結果は,四季成り性の強弱に着目した育種では,交配親の選定が重要な意味をもつことを示している.相関分析の結果,夏季の花房の開花日および春季の花房と夏季の花房の間の葉数と,合計花房数など四季成り性の強弱に関わる形質との間には有意な相関が認められ,花房間葉数が多く,夏季の花房の開花が遅い個体ほど合計花房数が少ないことが示された.これらのことから,夏季の花房の開花日や花房間葉数が,四季成り性の強弱に着目した育種を行う上での選抜指標になりうると考えられた.
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© 2011 園芸学会
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