Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
Online ISSN : 1882-336X
Print ISSN : 1882-3351
ISSN-L : 1882-3351
原著
自家不和合性遺伝子型がホモ(S1S1 または S2S2)である‘晩白柚’S1 実生の授粉による S1 または S2 を持つ自家不和合性カンキツ品種の確定
金 貞希森 智代若菜 章ノー スンビン酒井 かおり梶原 康平
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2011 年 80 巻 4 号 p. 404-413

詳細
抄録

無核カンキツ品種育種における重要形質の一つである配偶体型自家不和合性はブンタン,ブンタン雑種およびミカン類で知られているが,自家不和合性遺伝子(S)の対立遺伝子変異,S 対立遺伝子頻度および自家不和合品種や半自家和合品種の S 遺伝子型についてはほとんど分かっていない.本研究においては,まず‘晩白柚’自家交雑(S1)実生への‘晩白柚’の授粉と‘晩白柚’S1 実生間の授粉を行ってホモの S1 実生を決定した.つぎに,55 のブンタン品種・個体を含む 78 種類のカンキツにホモの S1 実生(S1S1 または S2S2)を交配した.S1 花粉授粉後に花柱基部で花粉管の伸長阻害がみられた 22 品種・個体は S1 対立遺伝子を持ち,S2 花粉授粉後に花柱基部で花粉管の伸長阻害がみられた 15 品種・個体は S2 対立遺伝子を持つことが明らかとなった.S1 対立遺伝子を持つ品種・個体の頻度は 29.9%(‘晩白柚’を含む 77 品種・個体中 23 品種・個体)で,S1 対立遺伝子頻度は 16.4%(Sf 対立遺伝子を除いた 140 対立遺伝子中 23 対立遺伝子)であった.S2 対立遺伝子を持つ品種・個体の頻度は 21.3%(‘晩白柚’を含む 75 品種・個体中 16 品種・個体)で,S2 対立遺伝子頻度は 11.6%(Sf 対立遺伝子を除いた 138 対立遺伝子中 16 対立遺伝子)であった.S1 対立遺伝子を持つ個体は鹿児島県で採種したブンタン個体群に特に高率(56.3%)で存在 していた.供試した 79 品種・個体のうち,6 品種・個体(‘晩白柚’,‘入来文旦’,長島文旦 No. 6,長島文旦 No. 7,‘カオパン’,‘早柚’)が S1S2 の遺伝子型を持っていた.本研究で S 遺伝子型を確定できたカンキツ品種は‘晩白柚’(S1S2),‘入来文旦’(S1S2),‘カオパン’(S1S2),‘早柚’(S1S2),‘キヌカワ’(SfS2)および‘川野なつだいだい’(SfS2)である.

著者関連情報
© 2011 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top