Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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ISSN-L : 1882-3351
原著
抗ウイルス剤を用いた茎頂培養によるハカタユリのウイルスフリー球根の育成
増田 順一郎ティエン ヌィエン クォックハイ ヌィエン ティ ラム比良松 道一竹下 稔金 鐘和中村 正幸岩井 久大久保 敬
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2011 年 80 巻 4 号 p. 469-474

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抄録
ハカタユリは,花の形,花と葯の色の取り合わせの良さに加え,他のユリにはない上品な香りおよび黄色から白色への花色変化に特徴がある.しかしながら,現在,国内に残存するハカタユリは非常に少なく,また,その多くは,花の奇形や葉にモザイク症状がみられることから,ウイルスに感染していると思われる.そこで,茎頂培養と抗ウイルス剤(DHT:2,4-ジオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン)を組み合わせる方法で,ハカタユリのウイルスフリー球根を育成した.培養前の球根は,RT-PCR の結果から,CMV(Cucumber mosaic virus),LMoV(Lily mottle virus),LSV(Lily symptomless virus)の 3 種のウイルスに感染していた.鱗片から子球を増殖させ,茎頂培養を行った結果,2 種のウイルスを除去することができたが,依然として LMoV あるいは LSV に感染していた.続いて,抗ウイルス剤を添加した培地で LMoV あるいは LSV に感染している子球の茎頂を培養すると,LSV を除去することができ,ウイルスフリー球根を作出することができた.その後,ウイルスフリー球根をりん片培養で増殖し,20℃ のファイトトロン内で馴化した.馴化後のウイルス感染調査において,すべての植物がウイルスに感染していないことが確認された.以上の結果から,抗ウイルス剤を用いた茎頂培養によって,ハカタユリのウイルスフリー球根を生産できることが示された.
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© 2011 園芸学会
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