抄録
‘バイオレットクイン’と‘スノークラウン’のカリフラワー(Brassica oleracea, L. var. botrytis)2 品種を用いて,1-メチルシクロプロペン(1-MCP)のアスコルビン酸代謝への影響を調査し,その分子メカニズムについて考察した.エチレン生成量は,1-MCP 処理により,‘バイオレットクイン’では抑制されたが,‘スノークラウン’では増大した.収穫後のアスコルビン酸代謝の変動パターンは,カリフラワー 2 品種間で異なっていた.‘バイオレットクイン’では,収穫後,アスコルビン酸含量は減少し,この減少は 1-MCP 処理により遅延した.‘スノークラウン’では,アスコルビン酸含量はほぼ一定のままであり,1-MCP 処理による影響は認められなかった.‘バイオレットクイン’では,無処理と比較して 1-MCP 処理では,BO-APX1,BO-APX2 および BO-sAPX の遺伝子発現がダウンレギュレートされ,BO-DHAR および BO-GLDH の遺伝子発現がアップレギュレートされた.1-MCP 処理をした‘バイオレットクイン’では,これらの遺伝子の調節が,アスコルビン酸の減少を抑制したと考えられた.‘スノークラウン’では,アスコルビン酸の分解に関わる BO-APX1,BO-APX2 および BO-sAPX,再生と合成に関わる BO-MDAR1,BO-MDAR2,BO-DHAR および BO-GLDH の遺伝子発現が,同時にダウンレギュレートされることにより,アスコルビン酸含量が一定に保持されたと考えられた.