Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ハクサイにおけるマーカー利用選抜による 3 根こぶ病抵抗性遺伝子の集積
松本 悦夫上野 広樹有賀 大輔坂本 浩司林田 信明
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 81 巻 2 号 p. 184-190

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抄録

ハクサイにおいては,これまで多くの根こぶ病抵抗性品種が育成されているが,菌の病原性の変化により抵抗性が崩壊し,必ずしも有効に利用されていないのが実状である.本研究ではより安定した抵抗性の付与を目標に,マーカー利用選抜(MAS)により,作用性の異なる 3 抵抗性遺伝子(CRaCRk および CRc)の集積を図った.それぞれの抵抗性遺伝子を有する 5 倍加半数体系統を育種素材として系統間交雑を実施し,分離後代での DNA マーカー分析により目的とする遺伝子型個体を選抜した.最終的に 3 抵抗性遺伝子座位がホモの 4 系統を育成するとともに,それらを組み合わせて F1 系統を得た.病原性を異にする 6 種の根こぶ菌系を用いて育成系統の抵抗性検定を行った結果,3 抵抗性遺伝子についてホモの自殖系統及び F1 系統はいずれも極めて高い抵抗性を示した.F1 系統の一般特性は対照品種と大差なかったが,両親系統の遺伝的背景が類似していたため雑種強勢の程度は弱かった.本研究の結果から,抵抗性遺伝子の集積により,幅広い菌系に対応できる高度抵抗性品種の育成が可能なことが明らかになった.

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© 2012 園芸学会
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