Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ジベレリン生合成阻害剤パクロブトラゾールによって促進される pat-2 遺伝子由来の単為結果性トマトの種子形成
大川 浩司菅原 眞治小田 雅行
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2012 年 81 巻 2 号 p. 177-183

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抄録

pat-2 遺伝子由来の単為結果性トマトの種子生産量は少なく,このことが単為結果性トマト品種を普及する上での障害となっている.そこで,pat-2 遺伝子由来の単為結果性トマトの種子形成を促進させる技術を確立するため,ジベレリン生合成阻害剤のパクロブトラゾール処理が種子形成に及ぼす影響について検討した.劣性の単為結果性遺伝子 pat-2 をホモに持つ単為結果性 F1 品種‘ルネッサンス’をポット(容量 5.1 L)に定植後,パクロブトラゾールを 0(対照区),0.2,1,5 および 25 mg/pot 処理し,開花時に振動受粉を行った.その結果,パクロブトラゾールの施用量が増えるほど,茎は太く,茎長,葉長および葉幅は短く,1 果重は軽くなった.有種子果率は,パクロブトラゾールの施用量が増えるにしたがって増加し,1 mg/pot 以上の処理で 100%となった.1 果当たりの種子数は,0 mg/pot の 12 粒から,1 および 5 mg/pot ではそれぞれ 52 粒および 74 粒に増加した.実際の F1 種子採種におけるこの技術の有効性を明らかにするために,‘ルネッサンス’の種子親である単為結果性トマト固定系統‘PASK-1’を定植後のポットに,パクロブトラゾールを 0(対照区),1 および 5 mg/pot 処理した.‘PASK-1’のすべての花は開花前に除雄し,開花時に‘ルネッサンス’の花粉親である単為結果性トマト固定系統‘PF811K’の花粉を交配した.その結果,有種子果率は 0 mg/pot の 59%から 1 および 5 mg/pot では 95%以上に増加した.1 果当たりの種子数は,0 mg/pot の 21 粒から,1 および 5 mg/pot ではそれぞれ 45 粒および 46 粒に増加した.これらの結果から,ジベレリン生合成阻害剤であるパクロブトラゾール処理は,pat-2 遺伝子由来の単為結果性トマトの種子形成を促進させることが示唆された.

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© 2012 園芸学会
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