Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
キクわい化ウイロイドに対し抵抗性を持つキク品種の探索
鍋島 朋之細川 宗孝矢野 志野布大石 一史土井 元章
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 81 巻 3 号 p. 285-294

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抄録
キクわい化ウイロイド(CSVd)抵抗性のキク品種(Chrysanthemum × morifolium Ramat.)の利用は安定的なキク生産を可能にする.我々は,CSVd を接種した CSVd 抵抗性のキク系統において CSVd が茎頂分裂組織のみならず葉原基にも存在しないことを明らかにしている.本研究では,この性質を表現型マーカーとして使うことで,いくつかの抵抗性品種を得ることに成功した.85 品種の茎頂分裂組織を CSVd に感染したキク根端に移植培養することによって,CSVd を茎頂分裂組織に接種して,新たな展開葉における CSVd 感染の有無を調査した.その結果,85 品種のうち 20 品種の抵抗性候補品種を得られた.これらの品種は CSVd 感染の特徴から 2 つのタイプに分けることができた.すなわち,感染してもその濃度上昇が遅いタイプ,および感染したあとに CSVd が消失するタイプである.20 の候補品種のうち,4 品種を CSVd に感染した‘ピアト’に接ぎ木し,新たに展開する葉の CSVd 濃度を調査した.2 つの候補品種においては CSVd 濃度が接ぎ木 2 か月後に上昇し,高保毒台木から切り離しても濃度は減少しなかった.一方,‘精の一世’においては,接ぎ木後に CSVd が検出された個体もあったが,台木から切り離した後に新しく展開する葉においては CSVd 濃度が減少した.また,この品種の茎頂部ではほとんど CSVd のシグナルが認められなかった.また,‘鞠風車’は接ぎ木後の濃度上昇が極めて遅い抵抗性品種であると考えられた.異なるタイプの CSVd 抵抗性はキクの抵抗性育種に貢献するであろう.さらなる改良は必要であるが,ここで開発した選抜法は CSVd 抵抗性品種の遺伝資源の拡充に利用できると考えられた.
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© 2012 園芸学会
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