抄録
介護用に開発されたロボットスーツ(Yonetake and Toyama, 2005)を農業に適用するために,山梨県のブドウ農家においてアンケート調査を行った.アンケート調査の結果,ブドウ栽培における様々な作業の中で摘粒が農家にとって最も負担に感じ,次いで房作り,剪定であった.また,58%の農家は腕,脚および腰をサポートするためのロボットスーツの購入を望んでいた.次に,OWAS 法を用いて,ブドウ栽培の剪定および摘粒の作業解析を傾斜地と平地の圃場で評価した.同一作業では傾斜地が平地よりも負担が大きく,傾斜の有無に関わらず剪定が摘粒よりも負担が大きかった.そこで,作業姿勢をさらに体の部位別に分けて OWAS 法で解析した結果,摘粒において,作業全体の 70%以上の時間帯は腕を上げ続けていることが明らかになった.この姿勢は AC 3 の評価であり,直ちに作業姿勢の改善が必要であることが示された.OWAS の作業解析における剪定の AC 評価は摘粒よりも大きいが,剪定は摘粒よりも負担を感じていなかったのは,歩く,かがむなどの様々な動きがあるためであった.一方,摘粒では,常に腕を上げて同じ姿勢を続けていることが問題で,特に腕に疲労を感じていることが明らかになった.これらの結果から,ブドウ農家の労働負担を軽減するには,工学的なアプローチが必要であることが示された.よって,日本のブドウ栽培において,農家が自由かつスムーズに腕,脚,腰を動かすことができるウェアラブルアグリロボットスーツの開発は農家の労働負担を減らすための解決策になるかもしれない.