抄録
ニホンナシ‘幸水’の品質を下げる大きな要因の一つに,芯腐れ症果実の市場への混入がある.そこで,果実の硬さを測定するために開発された音響共鳴振動法を芯腐れ症果実の判別に適用した.芯腐れ症の程度が異なる‘幸水’果実の第 2 および第 3 共鳴振動数を非破壊で音響共鳴振動法を用いて測定した.果実の共鳴振動数は,振動測定装置の加振器と受振器で果実を挟んで測定した.得られた振動の電圧信号は高速フーリエ変換によって処理され,共鳴振動数を決定した.芯腐れ症果実の作出は,Phomoposis 属菌または Colletotrichum 属菌の分生子懸濁液を樹上の果実に接種することにより行った.芯腐れの体積率は,切断した赤道面上の面積によって評価した.その結果,第 2 共鳴振動数が 500 Hz より小さい果実は,芯腐れの体積率が 5%より大きいことがわかった.判別率は 96.9%であった.また,芯腐れの体積率が 5%より小さい果実と 5%より大きい果実を判別するのは,第 3 共鳴振動数よりも第 2 共鳴振動数が有効であることもわかった.