2013 年 82 巻 2 号 p. 170-178
切り花の色の見え方は光環境によって変化する.我々は目視による色測定によって 6 種の異なる花色を持つバラ(白,赤,オレンジ,黄色,紫,赤紫)が生花店の光環境によってどのように変化するのかについて調査した.目視による色測定は国際照明委員会(CIE)の測色法を用いて 3 人の専門家によって行われた.6500 K(対照区),3500 K,2800 K の蛍光灯および 6500 K の LED ランプを実験に用いた.色の見え方はランプの種類やバラの花色によって変化した.対照区として用いた 6500 K の蛍光灯に比較して 2800 K の蛍光灯では白色のバラ以外のすべての花色のバラで知覚色が大きく変化した(ΔE > 10).3500 K の植物育成用ランプでは紫色のバラの知覚色が大きく変化した(ΔE > 34).6500 K の LED ランプを用いた場合に,すべての花色の ΔE の平均値が最も小さくなった.赤,オレンジ,黄色のバラでは 2800 K のランプに比較して 6500 K の LED ランプで見た目の色の違いが大きく,これは LED ランプのスペクトルが狭いことが原因であると考えられた.様々な花の本来の色を表現するためには,生花店の照明として自然光に近い白色蛍光灯を用いるのが適切である.