Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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リンゴ品種‘メイポール’の赤葉/赤果肉形質に連鎖した果実の早生性を支配する主要な QTL
森本 拓也平松 裕子伴野 潔
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2013 年 82 巻 2 号 p. 97-105

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抄録

リンゴの果皮色を呈すアントシアニンは,抗酸化性等の機能性が注目されている.また近年では果皮のみならず,果肉内部にもアントシアニンを蓄積する品種が育成されている.本研究では赤果肉形質を有する‘メイポール’の交雑後代(‘ふじ’ × ‘メイポール’,‘つがる’ × ‘メイポール’)を用いて,葉,果皮,果肉着色形質の遺伝解析を行い,‘メイポール’の赤果肉形質に連鎖した果実成熟に関する QTL の同定を試みた.F1集団における表現型の分離から赤葉,赤果皮,縞状果皮,赤果肉形質はそれぞれ一対の優性遺伝子によって支配されることが示唆され,赤葉形質は赤果肉形質と共分離した.着色関連遺伝子を解析すると,‘ふじ’由来の縞状着色形質は果皮のアントシアニン合成を制御する MdMYBA と対応しており,MdMYBA の遺伝子型が果皮の着色パターンにも関与することが推察された.さらに,‘メイポール’由来の赤葉/赤果肉形質は MdMYB10 と共分離し,連鎖地図上において,MdMYBAMdMYB10 は両品種の第9連鎖群下部の対応する領域にマッピングされたことから,これらの遺伝子が対立遺伝子であることが支持された.一方,各着色形質と果実成熟期との関連を検討すると,白果肉系統と比べて赤果肉系統の果実は早期に成熟する傾向が顕著に認められた.さらに QTL 解析を行うと,主要な QTL(LOD:8.94,寄与率:35.6%)が‘メイポール’の MdMYB10 近傍に検出され,赤葉/赤果肉形質には果実の早生性を支配する因子が密接に連鎖することが示唆された.

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© 2013 園芸学会
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