Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
除葉がブドウ‘マスカット・ベリー A’における アントシアニン組成に及ぼす影響
松山 周平丹澤 史子小林 弘憲鈴木 俊二高田 良二齋藤 浩
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2014 年 83 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

太陽光をはじめとする光量は,ブドウ果皮におけるアントシアニン,プロアントシアニジンおよびフラボノールの挙動に大きく関与することから,受光量に焦点を当てた最適な栽培管理(キャノピー・マネージメント)の実践は,高品質なワイン醸造用ブドウを得る上で重要な要素となる.本研究は,ブドウ‘マスカット・ベリー A’におけるキャノピー・マネージメントの効果を検証すべく,ブドウ房周りの光量の違いが果皮の着色に及ぼす影響を検討した.ベレゾーン開始時に房周りの除葉(基部から 5 枚程度)を行った区は,除葉を行わないコントロール区およびマルチシートを施設した区と比較して光合成有効放射(量)が約 60 倍,30 倍に増加していた.除葉区におけるベレゾーン後 10 週目(収穫期)のトータルアントシアニン含有量は,コントロール区に対し,約 6.5 倍増加していた.これらの結果は,アントシアニン合成関連遺伝子である CHSF3′HF3′,5′H および UFGT の発現量の違いで説明できた.さらに,除葉区におけるアントシアニン組成は,コントロール区と比較してデルフィニジン骨格のアントシアニン(デルフィニジン,ペチュニジンおよびマルビジン)が約 7 倍増加し,それら合成に関与する F3′5′H の発現量も約 4 倍に増加していた.また,除葉区における開花後 7 週目の F3′H およびF3′,5′H の発現量は,コントロール区と比較してそれぞれ約 2.5 倍,約 4 倍であった.このことからアントシアニン組成の変動には,F3′,5′H の発現量の増加とともに F3′H との発現量の比も重要であると考えられた.以上の結果から,棚式栽培される‘マスカット・ベリー A’の除葉による房周りの光量の調節は,果皮におけるトータルアントシアニン含有量の増強,デルフィニジン骨格を有するアントシアニンの割合増加に寄与することが示唆された.

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© 2014 by Japanese Society for Horticultural Science
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