Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
2,4- ピリジンジカルボン酸のスプレーカーネーション切り花の観賞期間延長作用
佐藤 茂小杉 祐介杉山 想大平 育実
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2014 年 83 巻 1 号 p. 72-80

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抄録

2,4-ピリジンジカルボン酸(PDCA)は,2-オキソグルタル酸のアナログであり,2-オキソグルタル酸と拮抗して 2- オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼの作用を阻害することが示されている.また,PDCA はアスコルビン酸と拮抗して 1- アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)酸化酵素の作用を阻害し,カーネーション切り花のエチレン生成を抑制することが報告されている.本研究では初めに,カーネーション由来の ACC 酸化酵素(DcACO1)cDNA を大腸菌で発現させて得た組換え ACC 酸化酵素を用いて,PDCA の酵素阻害作用を確認した.スプレーカーネーション‘ライトピンクバーバラ(LPB)’の切り花(茎長 1 cm)を PDCA で処理すると,エチレン生成の開始時期が対照に比べて,早まる,変わらない,遅延するなど,個別の花によって異なる効果が見られた.この多様な効果は,PDCA による ACC 酸化酵素の阻害作用に加えて,ジベレリンの生合成や不活性化反応などの 2- オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼが関与する代謝経路の攪乱によって引き起こされることが推定された.他方,PDCA は茎長 60 cm の‘LPB’の切り花の観賞期間を対照に比べて,0.3 mM 処理で 53%,1 mM 処理で 111%,2 mM 処理で 135%,有意に延長した.PDCA の品質保持効果は,スプレーカーネーション品種‘ミュール’でも確認された.これらの知見は,スプレー咲きタイプのカーネーションの品質保持剤として,PDCA が使用できることを示した.

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© 2014 by Japanese Society for Horticultural Science
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