園芸学会雑誌
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洋梨の石灰硫黄合劑の藥害に就て
佐藤 公一
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1943 年 14 巻 3 号 p. 222-228

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抄録

1. 撒布量により藥害發生の程度が異り, 藥液が葉より滴る程度の撒布は普通の撒布よりも常に藥害がひどく表れる。そして藥の濃度にもよるが, 細霧の状態に藥液が附着した場合には藥害は出難い。
2. 撒布時刻については杉山氏の實驗の如く大體午後撒布の方が午前中の撒布よりも藥害が弱いが, 撒布方法によつては之と反對の結果も出る。
3. 日照の強い日中に菰にて日影をつくり其下に供試樹があるやうにして撒布したが, 日被ひにより藥害を輕減する事は出來なかつた。之よりみると藥害と日射との間には直接關係はないやうである。
4. 8月上旬より10月下旬に亙つて時々撒布を行ひ, 藥害と撒布時期及び氣象状態との關係を見た。實驗した種々の藥液の濃度を通じて大體藥害は8月上旬が最も強く, 10月下旬は全くなく, 其他の時期には種々の程度の藥害が出た, 時期に依り藥害に可成り大きい變異がみられる。
其間に於る日射, 氣温, 濕度の氣象要素と藥害との間には種々の比較を試みたが一定關係は見られなかつた。然し本實驗では材料不足, 其他の理由の爲に相關の有無, 程度は不明である。材料, 方法を工夫して實驗したならば氣象要素の1或は2つ位の組合せたものと藥害との間の相關は明とならう。
5. 藥害には i) 氣象状態と藥害との直接關係。ii) 生理状態と藥害との關係。の2者があり, 條件如何に依つては ii)がi) よりも強く現れる事があると考へられる。換言すれば藥害の出易い時期と出難い時期があり, 此等の時期には氣象状態の少し位の變動は其影響が少いものであらう。
6. 一樹を3分して之を無撒布 (對照) 區, 石灰硫黄合劑 (6月中旬) 撒布に依り藥害の輕い區及び其甚しい區の3區に分ち, 藥害の程度による果實への影響を見た。藥害程度を希望通り發生せしめ得なかつた事と其程度の適當な表示法を考へつかなかつたので本實驗は意義の少いものである。
7. 果實の肥大に及す藥害の抑制的影響は撒布後まもなく最も強く表れ, 時期の經過と共に減少し, 終り頃には相當藥害の恢復が行はれた事が分る。本實驗に於ける輕藥害區では果實の肥大は餘り大きく減じてゐなかつたが, 重藥害區では相當顯著な減少を示してゐる。
8. 果實の後熟は藥害により遲れ, 其程度の強くなる程, 遲延が大きい。然し藥害の重い區の果實でも後熟は異常なく行はれる。藥害の影響は果實の肥大に於てよりも後熟に於ての方が明瞭に見易い。

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