園芸学会雑誌
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傾斜地果樹園の土壤管理に關する研究 (第1報)
千野 知長大野 俊雄杉村 順司
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1953 年 21 巻 4 号 p. 193-201

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抄録
勾配16度の角礫に富む埴土園に於て, 敷藁法, 清耕法, 草生法, 夏季被覆作物法及び冬季被覆作物法の5種の管理法が降雨に因る侵蝕, 土壤温度, 土壤水分及び桃幼樹の生育に及ぼす影響を比較検討した。その成績の要約は次の如くである。
(1) 降雨に因る侵蝕の防止効果は敷藁, 草生, 冬季被覆作物の3区が同程度に顕著であり, 夏季被覆作物区は之等に比し劣るが, 被覆完成後流亡土は前者と差を認めなかつた。流亡土は必ずしも流去水の多少に伴わず管理法の相違, 降雨の性質, 土壤の状態, 管理の季節的変貌等に依り, その比率を異にするものと推察された。流亡土壤の土性は各区間に大した差はないが, 試験圃表土に比しいずれも角礫含有率が約3分の1以下であつた。
(2) 桃幼樹の伸長生長は7月末~9月上旬の間に顕著な差を生じ, 敷藁区>冬季被覆作物区>清耕区>夏季被覆作物区>草生区の順に良好であり, 地上部地下部の生育量も全く之と一致した。地下部は各区共60糎以上に侵入して居り5~10糎の範囲に於て最高分布密度を示したが細根は区により最高分布密度の範囲を異にした。
(3) 管理の土壤温度に及ぼす影響は30糎の深さに於ても認められた。敷藁区, 草生区, 冬季被覆作物区は5, 6月の地温に不足し, 清耕区, 冬季被覆作物区は7, 8月地温が過度に上昇し又敷藁区, 夏季被覆作物区, 草生区は9月以後の地温の低下が早く訪ずれた。地温と桃幼樹の伸長生長並びに地上部地下部の生育量との関係は明瞭を欠いたが, 土壤表層の地下部特に細根の分布率とは相当深い関係が存するのを認めた。
(5) 管理の土壤水分に及ぼす影響は30糎の深さに於ても認められた。敷藁区は各深度共水分含量常に最高にして適湿を保持し, 冬季被覆作物区これに亜ぎ, 清耕区の水分不足は深さ20糎以上には及ぼず, 夏季被覆作物, 草生区は20~30糎に於て尚可成りの不足を示した。而して水分の適否と桃幼樹の生育との関係は極めて顕著であつた。
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