園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
胡瓜の雌花•雄花•兩性花の分化を支配する條件の研究 (第1報)
伊東 秀夫加藤 徹
著者情報
ジャーナル フリー

1953 年 22 巻 3 号 p. 138-144

詳細
抄録
胡瓜について, 性の発現の変移の在り方を統計的に調べ, それを支配する原因を追究した。
(1) 光の強さ並びに窒素肥料との関係を見ると, 遮光の影響として雌花節が増している。窒素の影響は日照普通区では窒素多用によつて雌花節減少し, 雄花節増し, 遮光区では窒素多用によつて却て雌花節が増し, 雄花は減つている。
(2) 日長の影響を摘葉と側枝の放任並びに摘除と組合せて験すと, 側枝摘除の場合には短ひ•摘葉が雌花を増さしめることが確実であるが, 側枝を放任すると, 短日は雌花を増すが摘葉処理の影響は有意義に表われなかつた。
(3) 主茎の誘引仕方を変えた場合には, 這い仕立は雌花数最も多く, 直立仕立は雄花数が最も多く, 合掌仕立はこの中間にあつた。
(4) 発育ステイジ別に調べると, 雄花が先ず表われ次第に数を増して最盛期に達し, こゝから増し方が減つてくる。大体S字曲線になる。雌花は雄花より遅れて現われ, 雄花のS曲線より遅れてS曲線を画く。節位別に調べて見ると, 基部寄りには雄花の山があり, 頂端寄りに雌花の山が画かれる。その雄花の山と雌花の山との中間に両性花が表れる。
(5) 総べての処理を通じ, またステイジ別の性の変移を考えて見て, 雌花の発現は栄養生長が低位に置かれた時に促される傾向が認められる。
(6) キユウリには, 雄花と雌花と両性花が発現する。雄花が最も早く表われ, 次いで両性花, 最後に雌花という順序に発現し, 両性花は発現しないこともある。この花型の間の関係は, 植物体の生育に伴う連続的なものと認められる。WENT氏は, Acorn squash に於ては雄花と雌花との関係は断層的に隔てられていると記しているが, 本実験によると, キユウリの場合には, 両者の間には両性花が介在し, その間に橋が架せられている。植物体の内部生理的状態に支配されて, 出現する花の性が連続的系列の上で転移するものと解釈される。植物体は環境條件に感応しながら生育する。環境條件に対する感応仕方, 感応して起こる内部生理的状態の変化仕方, その変化に対応して起こる花の性の変化仕方は遺伝的の支配を受けて, それぞれの種類, 品種, 系統の特異性を示すことになるものと考えられる。
著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top