園芸学会雑誌
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キュウリの雌花・雄花・両性花の分化を支配する条件の研究(第10報)
暗期の影響の研究
斎藤 隆
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1961 年 30 巻 1 号 p. 1-8

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抄録
1.苗令と短日感応度 子葉のみの時期には,暗期を与えても雌花は分化しない。本葉1枚展開時には暗期4回にはなお反応しないが,6回繰り返すと反応を始め,本葉2枚展開時には4回繰り返しに反応するという風に,苗令が進むにつれて暗期に感応しやすくなる。
2.暗期の長さと回数 暗期の長さは18時間が最適で,処理回数は最少3回必要である。限界暗期は処理回数と関連して変り,回数が多いほど短かい暗期でよくなるが,もつとも短かくても9回処理まででは8時間である。暗期が20時間を越すとかえつて雌花は減り,24時間では全然発現しない。暗期処理回数の多いほど雌花の発現は多くなる。
3.暗期中における弱い光の影響 16時間暗期処理中2, 16, 32および160f.c.の光を照射すると,160f.c.では雌花の発現がまつたく抑えられるが,32f.c.以下ではある程度雌花を発現し,光の弱いほど発現数は多くなる。
4.暗期中断の影響 暗期処理中,1時間電燈照明すると,中断しない場合よりは雌花の発現は減るが,中断前後の暗期はある程度補足的に作用する。
5.明期の光の強さと波長の影響 暗期処理中の明期の光の強さを変えると,光の強さが弱くなるにつれて雌花発現数は減り,80f.c.以下では雌花は,発現しなくなる。また光の色を変化させてみると,赤色光は影響がないが青および近赤外光は雌花の発現を抑制した。
6.暗期処理中およびその前後の温度の影響 暗期処理前昼夜17-17°Cに管理した場合にもつとも雌花の発現が多く,24-17°, 24-32°の順に雌花は抑制された。
暗期処理中の温度を17°Cに保つた場合にもつとも雌花の発現が多く,これより低温でも高温でも発現は減り,32°C以上では全然発現せず,暗期の繰り返し数を12回まで増しても無効であつた。明期24°C,暗期17°Cの組み合わせが最適であつた。
暗期処理後の温度を,昼24°C,補助光によつて照明する夜間を17°C, 24°Cおよび30°Cの3区につくり別けてみると,17°Cの場合にもつとも雌花の発現多く,温度が高くなるにつれて発現は減つた。
7.連続照明下の温度の影響 温度の影響力も非常に強いから,暗期を与えないままで温度の調飾によつて雌花の発現を誘起することができるかどうかをみると,17°Cに4日以上保つと雌花は発現する。暗期を与えなくても温度処理だけでも雌花は発現する。また,生育初期から連続照明下で17, 24および30°Cの3つの温度下で育てると,17°C下でもつとも雌花の発現が早く,温慶が高くなるにつれて発現は遅れる。しかし,30°C下でも高節位にわずかながら雌花の発現がみられ,高温連続照明下でも生育後期になると雌花は発現する。
8.暗期処理前の照明の強さおよび窒素施肥の影響 暗期処理前に遮光され,あるいは窒素を多量または少量施されたものは,遮光されず,中庸量の窒素を施されたものに較べて雌花の発現が少ない。暗期処理開始期の体内成分と対照して考えると,蛋白態窒素と全糖含量がともに多い場合に暗反応が充分に行なわれ,雌花の発現が多いという関係がある。
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