園芸学会雑誌
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温州ミカンに対する緑肥連用の影響 (第3報)
果汁中の全糖ならびにクエン酸含量におよぼす影響
坂本 辰馬奥地 進薬師寺 清司
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1962 年 31 巻 3 号 p. 257-262

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抄録
温州ミカン成木に対して1946年より1960年までの15か年にわたり緑肥を連用した結果, 果汁中の全糖または可溶性固形物およびクエン酸含量につぎのような変化をもたらした。なお試験区は年間のN, P, Kを, 全部緑肥中に含有されているこれらから補給する緑肥100%区, 75%を緑肥から25%を化学肥料 (硫安, 過石, 硫加) から補給する緑肥75%区, 以下同様緑肥50%区, 25%および0%区である。
1. 1946年より51年まではおおむね緑肥0%区の果実の可溶性固形物およびクエン酸含量は緑肥100%区のそれらより高い値を示した。
2. 1953年より58年までの期間でも緑肥0%区は100%区より高いクエン酸含量を示したが, 全糖含量は年度により変化し, 一定の傾向を認めにくかつた。緑肥50%区の果実のクエン酸含量はおおむね緑肥100%区と0%区の中間的な値を示したが, 可溶性固形物または全糖含量は年度によつて変化する傾向を示した。
3. 1960年の採収果実につき, 従来の試料採取法による果汁中の全糖およびクエン酸含量の分析値を検討するため, 主要果実群 (果実の大きさと果皮の着色度より分別し, 全果実に対して主要な割合を占めるもの) を供試し, これよりの混合果汁, さらに主要果実群それぞれの果汁中, また個々の果実の果汁中の全糖およびクエン酸含量を分析した。この結果緑肥100%区の全糖含量は0%区のそれより低いのではないかとの推定をえた。
4. 以上より緑肥少量区 (0%および25%区) の果実のクエン酸含量は年次の経過とともに多量区 (緑肥100%および75%区) より高くなつたことが考察され, さらに緑肥多量区の全糖含量は少量区より低くなつたのではないかと考察された。
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