抄録
1. 温州ミカン園の隔年結果状態を, 1929年(当時樹令33年生)以来の収量調査に基づいて明らかにした。逐年激化の傾向で, 成り年6,000kg内外 (10アール), 不成り年1,000~2,000kgの較差を示している (隔年結果矯正のための摘果, 剪定技術などが確立されていない時代において)。
2. 隔年結果樹の生産的なしくみについて, 収量構成の年変化, 1年生枝の種類別着生率, 結果負担の異なる年における同種1年生枝の着果率の違いを具体的に数値をもつて表わした。
3. 隔年結果性は, 単位樹冠容積当たりの収量, 結果数の年変化によつて, 最も明瞭に示される。
4. 隔年結果の外的な表われとして, 不着果の1年生枝 (春枝, 夏枝) と結果枝の着生割合が, 年ごとに逆にアンバランスで逐年激化してゆくことがうかがわれる。連年結果状態として望ましい割合は, 不着果枝60~55%, 結果枝40~45%である。
5. 同じ形状の不着果春枝において, 不成り年に発生した枝の翌春の着花率は, 1例として47.1%, 成り年に発生した枝の翌春の着花率は16.9%とかなりの差がみられる。弱小な春枝の方がこの傾向が顕著である。また, 不成り年の結果枝は翌春着花することさえある。
6. 隔年結果というのは, 着果する枝数の全枝数に対する割合がつり合わないことの表現である。花がつき, 果実として発達してゆくことは, 樹体内を花芽の形成しにくい状態に追いこみ, 花成物質の集積を妨げる結果となつている。果実負担の大きい樹では, 不着果春枝でも花をつける能力が下がり, 翌年の結果枝と不着果枝との着生割合のアンバランスを激しくして, 隔年結果を激化させる。