抄録
トマトの生育ならびに花芽の分化•発育に対する育苗中の環境条件として日長と光の強さおよびこれらと温度との組み合わせの影響について実験した。
1. 日長の影響 日長は4, 8, 12, 16, 20および24時間とした。日長16時間までは日長が長いほど苗の発育は盛んで, 花芽の分化は早く, 着花数が多い。日長が16時間を越すと反対に苗の発育は悪くなり, 花芽の分化は遅れ, 着花数が減少する。日長24時間では苗の発育は著しく押えられ, 花芽の分化が遅れ, 着花数が著しく少ない。トマトの生育ならびに花芽形成に対しては日長16時間が最適である。
2. 日長と温度の組み合わせの影響 日長は8時間と16時間の2区とし, 温度は昼温と夜温を17°Cと24°Cのそれぞれの組み合わせ4区とした。長日区は苗の発育が早くて, 花芽の分化が早く, また各花の発育も早く, 着花数多く, 開花•収穫が早まり, 収量が多い。昼温17°Cは苗の発育を遅らし, 花芽の分化, 発育を遅らすが, 花芽の分化数が徐々に増加して, 24°C区より多くなつている。夜温17°C区は花芽の着生節位を低下し, 分化期が早く, 開花, 収穫を早め, 収量が多い。
3. 光の強さと夜温の組み合わせの影響光の強さは無処理の100%日照区, 74%日照区, 49%日照区および24%日照区の4区を設け, 夜温は17°Cと25°Cの2区とした。光の強さについては, 両夜温区ともに光の強いほど苗の発育は促がされ, 花芽の分化節位は下がり, 分化が早く, かつ着花数が多く, 花芽の発育も早くて開花収穫が早く, 収量が多い。
4. 花芽形成と体内成分との連関 日長と光の強さおよびこれらと温度とを組み合わせた条件下で育苗した場合の花芽の形成と苗の体内成分 (窒素, 炭水化物含量) との関係をみると, 花芽の分化が早く起こり, 分化数を多くした処理, すなわち長日, 低夜温および光度の強い場合は, みな炭水化物特に全糖の含量が多く, 窒素特に蛋白態窒素が多くなつている。すなわち, 苗の発育が充実して生体重/草丈が大で強剛な発育を示すような場合は全糖と蛋白態窒素とがともに多く, そのような場合に花芽の分化が早く起こり, 分化数が多く, 発育も十分に行なわれることがみられた。