抄録
トマト果実の着色と呼吸との関係について1960年および1961年の両年にわたり信州大学農学部において実験を行なつた。使用した品種は両年とも三岡である。
1. 果実の呼吸量は未熟期から緑熟期にわたつて減少し, 緑熟期から呼吸量が増大して, 果実全面着色になるにおよんで呼吸頂点を形成し, 以後減少した。呼吸量の増減は果実中の葉緑素およびカロチノイド色素の消長と密接な関係がみられた。
2. 果実の貯蔵温度ど呼吸量との関係については, 室温 (22~25°C) 貯蔵果実は30°Cおよび35°C貯蔵果実に比べて, 呼吸頂点は高くなるが, 他の時期では呼吸量が低くなつた。30°Cおよび35°C貯蔵果実の呼吸量は全般に高くなつた。
3. 酸素 (21%) および炭酸ガス (1%) に果実を貯蔵したものでは, 後者は前者に比べて, 呼吸が抑制された。したがつて色素含量では炭酸ガス貯蔵果実は酸素貯蔵のものに比べて少なかつた。とくにリコピン含量の差が著るしかつた。