園芸学会雑誌
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トマトの高温障害に関する研究 (第4報)
正常および高温処理をうけたつぼみの雌雄ずいの形態的観察
岩堀 修一
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1965 年 34 巻 1 号 p. 33-41

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抄録
高温処理をうけたつぼみの雌雄ずいの形態的異常を, 正常なものの発育経過と対比しながら観察した。用いた品種は福寿2号である。高温処理は40°C1日3時間ずつ2日間行ない, 処理直後と5日後の2回つぼみを採取して, FAA固定, DELAFIELD′s haematoxylin で染色, 検鏡した。つぼみの長さと開花日までの日数の間に高い相関があつたので, 高温処理直前に測定したつぼみの長さから処理時のステージを推定した。
正常なつぼみの発育は以下のようであつた。開花10日前: 胚のう母細胞, 花粉母細胞, 開花9~8日前: 花粉母細胞減数分裂, 花粉4分子形成, それより1日ほど遅れて胚のう母細胞減数分裂。開花7~3日前: 胚のう細胞は減数分裂3分子退化後, 核が3回分裂して, 卵細胞, 助細胞, 極核, 反足細胞を形成, 花粉は4分子離散, 収縮, 後肥大し, 2核となつて発芽孔を完成, 球状になつて形態的には成熟する。開花2~1日前: 助細胞は洋梨状となり, 極核は融合して中心核形成, 反足細胞は崩かいし, 胚のうは形態的に完成する。
減数分裂期に高温処理をうけた花粉はすべて濃く染まり, 原形質分離を起したようになるが, 後空きよとなつた。タペート細胞は消失せず, むしろ肥大した。高温処理時の花粉のステージが進むにつれ, 空きよ花粉の出現の頻度は少なくなり, 完成花粉では高温処理をうけても形態的な異常はみられなかつた。
減数分裂期に高温処理をうけた胚のうは処理直後は形態的な異常はみられなかつたが, 5日後にはステージが進んでおらず, 崩かいが観察された。その後のステージに高温をうけた胚のうでも, 処理5日後に卵細胞や極核が崩かいしたり, 発育が遅れたものが見いだされた。しかし開花2~1日前に高温処理をうけた胚のうでは形態的な異常は認められなかつた。
減数分裂期以前の花粉母細胞や胚のう母細胞の時期に高温処理をうけたものには形態的な異常は観察されなかつた。
以上の結果は前に報告した圃場実験で得られた不結実の傾向とよく一致していた。
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