抄録
ナツダイダイ樹にヒ酸鉛を散布した場合の果実の減酸機構について考察した。
1. ヒ酸鉛散布による果実の減酸は, 酸の生成, 蓄積のさかんな幼果期の処理が最も効果的である。また, 処理区の果実では糖含量が高い。
2. 処理区の果実の果肉では, 対照区に比べてフォスフォエノールピルビソ酸カルボキシラーゼの活性が低い。対照区の果肉に, As2O3 を添加しても, 酵素活性は押えられる。
3. ヒ酸鉛の減酸効果については, Wood-Werkman 反応の阻害が大きい要因と推察される。
4. 処理区の果実内には, ヒ素の存在することが, 定性的に明らかである。
5. 葉内の水溶性有機酸含量は, ヒ酸鉛の散布によつて変わらない。