抄録
1. 鉢植えの温州ミカン (カラタチ台3年生) 18樹を供試し, 次のような方法で低温遭遇時間を異ならせた後に, いつせいに-(5.0~7.5)°C下に9.5時間おいて, 凍結処理を行なつた。すなわち, 11月から翌年の1月までガラス室内におき, 0°C以下にまつたくあわせていない温暖処理区, その間自然状態におき0°C以下に110時間遭遇させた自然区, および11~12月における44日間にわたつて朝方あるいは夜間の一定時間じゅう-1~0°C室に入れて, 人工的に0°C以下に400時間遭遇させ, 1月には自然状態においた寒冷処理区 (低温遭遇時間の総計460時間) の3区を設けた。
2. 温暖処理区で全樹体の95~100%が凍り, 自然区で85~100%が凍つた。一方, 寒冷処理区では樹体の30~50%が凍つたにすぎず, 前2区との間に明らかな違いがみられ, ハードニングの効果が明らかであつた。
3. 12月28日に各区から枝葉を採り, 葉のでん粉, 糖, 窒素含量を定量した。さらに, しよ糖液を用いて原形質分離法で枝葉の細胞浸透圧を測定し, また, ヨード•ヨードカリ法で細胞内でん粉含量を比べた。その結果, 寒冷処理区および自然区では葉のでん粉含量が減少し, ぶどう糖含量が増加し, 細胞内でん粉含量の減少に伴つて浸透圧が高まつた。その傾向は寒冷処理区に著しく, 特に夏季に発生した枝葉において顕著であつた。