園芸学会雑誌
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35 巻, 2 号
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  • 鳥潟 博高, 松井 鋳一郎
    1966 年 35 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1~2年生のクリの樹皮に含まれるポリフェノール性物質について分析し, ニホングリならびにチューゴクグリの種間および品種間差異を明らかにし, さらにクリの栽培上問題となつているクリタマバチ抵抗性との関係について検討した。
    1. クリの樹皮に含まれるポリフェノール性物質は20種以上存在し, 没食子酸, ロイコシアニジン, フラボノール, ガロカテキシ, エラグ酸, 未知のカテコールタンニンがみられた。ほかにスコポレチンおよび6, 7-ジメトキシクマリンと推定されるものがある。
    2. クリの種間に, 定性的定量的差異をみとめた。ヒロガロールタンニンはニホングリおよびチューコクグリのいずれにも存在するが, カテコールタンニンはニホングリに多く存在し, チューゴクグリには少ないか全くみられない。ヘーパークロマトグラムを比較すると, チューゴクグリはニホングリと異なつている。さらにチューゴクグリの中でも北支産のクリと南支産のそれで異なる。すなわち, 前者は難水溶性のピロガロールタンニンが少ないが, 後者は多い。また易水溶性ピロガロールタンニンは両者とも多かつた。カテコールタンニンの含量はニホングリが乾物1g当り10~20mg, チューゴクグリは5mg前後で, 前者の方が数倍多い。ピロガロールタンニンは差がなく85~96mgである。
    3. クリタマバチ抵抗性とタンニン含量の関係をみると, 抵抗性品種は相対的にカテコールタンニン, ロイコシアニジンが多く, ピロガロールタンニンが少ない。それらの含量はそれぞれ, 10.3~22.4mg, 0.24~0.61(吸光度, Eo), 70~110mgである。感受性品種はカテコールタンニン, ロイコシアニジンおよびピロガロールタンニンがそれぞれ, 2.7~16.2mg, 0.00~0.49(吸光度, Eo), 90~120mgであつた。
    クリタマバチ抵抗性とカテコールタンニン, ロイコシアニジンおよびピロガロールタンニン含量の相関係数をもとめるとそれぞれ, +0.782, +0.458, +0.476で, いずれも5%危険率で有意で, カテコールタンニンについては1%危険率で有意であり, とくに高い相関のあることがわかつた。
  • 安達 義正, 中島 芳和, 堀金 正已
    1966 年 35 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 1958年3月, 2年生のユズ台, カラタチ台温州ミカンをコンクリートわくに栽植し, 同年は100ppmのりん酸を含む液肥で栽培し, 翌年3月からりん酸施肥量を変えて樹体の生育, 果実収量, 品質および葉内無機成分含量に及ぼす影響を検討した。
    2. 樹体の生育は1959年から1963年の4か年平均でりん酸施肥の効果を示さなかつた。一方りん酸を含む液肥を前もつて与えなかつた温州ミカン幼樹の生育はりん酸施肥によつてかなり促進された。
    3. 果実収量, 果汁内可溶性固形物含量および葉内無機成分含量は, 1960年から1963年の3か年平均でりん酸処理の影響を示さなかつた。果汁ちゆうの酸については1960年から1963年の3か年平均および1962年度でりん酸処理による減酸効果が顕著であつた。
    4. りん酸施肥によつて果皮の着色を阻害する傾向がみられた。
    5. カラタチ台温州ミカン幼樹はユズ台温州ミカン幼樹に比べて果実収量, 果汁内可溶性固形物含量が高かつた。
    6. カラタチ台の果実は大きいものほど可溶性固形物含量が低かつたが, ユズ台のりん酸等量施肥区 (P2O5/N=1) では逆の傾向を示した。果汁の酸含量と可溶性固形物含量の相関関係は無りん酸区でカラタチ台とユズ台とが反対になつた。
    7. ユズ台の温州ミカン幼樹は同じ台木の成木に比べて樹勢が劣るように思われた。
  • 低温遭遇に伴う温州ミカンの枝葉の細胞浸透圧ならびに体内成分の変化と耐凍性の増大との関係
    吉村 不二男, 加藤 紘一, 増田 治之
    1966 年 35 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 鉢植えの温州ミカン (カラタチ台3年生) 18樹を供試し, 次のような方法で低温遭遇時間を異ならせた後に, いつせいに-(5.0~7.5)°C下に9.5時間おいて, 凍結処理を行なつた。すなわち, 11月から翌年の1月までガラス室内におき, 0°C以下にまつたくあわせていない温暖処理区, その間自然状態におき0°C以下に110時間遭遇させた自然区, および11~12月における44日間にわたつて朝方あるいは夜間の一定時間じゅう-1~0°C室に入れて, 人工的に0°C以下に400時間遭遇させ, 1月には自然状態においた寒冷処理区 (低温遭遇時間の総計460時間) の3区を設けた。
    2. 温暖処理区で全樹体の95~100%が凍り, 自然区で85~100%が凍つた。一方, 寒冷処理区では樹体の30~50%が凍つたにすぎず, 前2区との間に明らかな違いがみられ, ハードニングの効果が明らかであつた。
    3. 12月28日に各区から枝葉を採り, 葉のでん粉, 糖, 窒素含量を定量した。さらに, しよ糖液を用いて原形質分離法で枝葉の細胞浸透圧を測定し, また, ヨード•ヨードカリ法で細胞内でん粉含量を比べた。その結果, 寒冷処理区および自然区では葉のでん粉含量が減少し, ぶどう糖含量が増加し, 細胞内でん粉含量の減少に伴つて浸透圧が高まつた。その傾向は寒冷処理区に著しく, 特に夏季に発生した枝葉において顕著であつた。
  • 門屋 一臣, 倉岡 唯行, 松本 和夫
    1966 年 35 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナツダイダイ樹にヒ酸鉛を散布した場合の果実の減酸機構について考察した。
    1. ヒ酸鉛散布による果実の減酸は, 酸の生成, 蓄積のさかんな幼果期の処理が最も効果的である。また, 処理区の果実では糖含量が高い。
    2. 処理区の果実の果肉では, 対照区に比べてフォスフォエノールピルビソ酸カルボキシラーゼの活性が低い。対照区の果肉に, As2O3 を添加しても, 酵素活性は押えられる。
    3. ヒ酸鉛の減酸効果については, Wood-Werkman 反応の阻害が大きい要因と推察される。
    4. 処理区の果実内には, ヒ素の存在することが, 定性的に明らかである。
    5. 葉内の水溶性有機酸含量は, ヒ酸鉛の散布によつて変わらない。
  • 中川 昌一, 南条 嘉泰
    1966 年 35 巻 2 号 p. 117-126
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ブドウ早生種のキャンベル•アーリー, 中生種のマスカット•ベーリーAおよび晩生種の甲州の3品種の果粒について, 開花前から成熟期までその形態学的な比較を行なつた。
    2. 果粒が急速に発育する第I期の生長期間は, 3品種ともほぼ同一であつたが, 生長が劣る第II期は, キャンベル•アーリーがマスカット•ベーリーAや甲州よりも短かかつた。また再び発育が盛んになる第III期の生長期間は, 甲州がキャンベル•アーリーやマスカット•ベーリーAよりも長かつた。
    3. 3品種とも, 果皮の内壁組織の増加は, 他の組織の増加よりも急速で, 特に第I期の後半に顕著であり, 成熟期における内壁組織は全横断面積の約50パーセントを占めていた。甲州では, 第III期における外壁組織の厚さの増加がいちじるしく, その時期の果粒の増大と深い関連がみられた。
    4. 内壁組織は, ほぼ均一な大ぎさおよび形の細胞からなり, 細胞は果粒の生長とともに相似的に増大した。満開期から成熟期までの細胞容積の増加率は, 甲州において最大で, 次いでマスカット•ベーリーA, キャンベルアーリーの順に少なかつた。しかし, 成熟期の内壁組織における細胞の大きさは, マスカット•ベーリーAが最も大きく, 甲州およびキャンベル•アーリーではそれよりも小さかつた。外壁組織の内部の柔細胞は, 生長の後半である第IIおよび第III期には, 放射方向のみに伸長し, 成熟期の外壁組織の中央部の細胞の大きさは, 特に放射方向の細胞径で, 甲州が他の2品種よりも大きかつた。
    5. 胎座および内壁組織における細胞分裂の停止期はキャンベル•アーリーでは開花後11日, マスカット•ベーリーAおよび甲州では共に開花後7日であつた。内壁組織の細胞分裂の停止期における細胞数は, キャンベル•アーリーではマスカット•ベーリーAおよび甲州の約2倍であつた。外壁組織における細胞分裂は, 最初放射方向にのみ停止し, その時期はキャンベル•アーリーでは開花後12日, マスカット•ベーリーAおよび甲州では開花後8日であつた。その後, 分裂の後半期には, 細胞分裂は接線方向にのみ行なわれた。外壁組織の中央円周上における細胞分裂は, 3品種において, それぞれ開花後19日から22日まで続けられた。そして, 外壁組織の細胞分裂は, 内部の層ほど早く停止し, 順次外部の層に及んで停止した。なお, 果粒の最外層である下皮および表皮組織における細胞分裂の停止期は, キャンベル•アーリーでは開花後32日, マスカット•ベーリーAでは35日, 甲州では38日であつた。しかし, これらの組織における細胞数は3品種の問にいちじるしい差異はなかつた。
  • 塩水ならびに石灰施用と生育障害との関係
    増井 正夫, 水田 士華毅
    1966 年 35 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 前報で静岡県磐田市においてみられたメロンの生育障害は, 塩分を含む地下水をかん水することにより, それが土壌中に増加するためであることがわかつた。しかしながら, かんがい水ちゆうにどのくらいまでの塩分が含まれていても安全であるか, という問題については明らかにされていない。一方, 塩害は土壌へのカルシウム施用によつて軽減されるかもしれないといわれている。そこで, これらの問題を明らかにする目的で, NaClの濃度5段階 (0, 100, 250, 500, 1,000ppm), 石灰の施用量2段階 (1株当たり0, 40g) で, それぞれの組み合わせにより10処理区を設けた。
    2. 葉, 茎, 根の乾物重, 果実の重量, 糖度, 外観, 成熟日数, 5要素の全吸収量は, NaCl の濃度が0から1,000ppmに増加するにつれて著しく減少した。ここで注目すべきことは, 石灰を施用せずに, 100ppmNaClをかん水した植物体に, わずかではあるが葉縁の巻き込み, 葉焼け, 根の褐色化を伴う生育障害がみられたことである。500, 1,000ppm NaCl をかん水した植物体の果実は, 石灰施用のいかんにかかわらず重量が減少し, ネットは発達せず, 果皮も黄色みがかつて外観は著しく劣り, まつたく商品価値はなかつた。
    3. 土壌の置換性Na, 電気伝導度, 全値物体のNa2O吸収量, 葉のNa2O, Cl 含量はかんがい水のNaCl濃度が増加するにつれて高まつた。一方, かんがい水ちゆうのNaCl濃度と蒸散に関係があると思われる葉のSiO2含量との間には拮抗関係がみられたが, 各処理区の葉のNa2O, Cl, SiO2含量はそれらの過剰あるいは欠乏症状を示さなかつた。
    これらの結果から, メロンの塩害は養水分の吸収を減退させるNaClを含む水をかん水するためであると思われる。
    4. 0から250ppm NaClをかん水した場合, 1株当たり40gの石灰施用は地上部, 根の乾物重, 果実の重量を増加させたが, 500ppm以上のNaClをかん水した場合にはなんら影響はみられなかつた。したがつて, 1株当たり40gの石灰施用は, 500ppm以上のNaClを含む水をかん水する場合には, メロンの塩害を軽減できないと思われる。
  • 土と有機物の比率の異なる混合土の化学性
    高橋 和彦, 吉田 雅夫
    1966 年 35 巻 2 号 p. 134-141
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    火山灰土,荒木田,川砂の3種類の土に腐葉土の比率を変えて混合土を作り, その化学性を調べた。
    1. 置換容量はいずれの土においても腐葉土を加えることにより増加し, ことに荒木田, 川砂では顕著に増加した。
    2. 緩衝能力は川砂が最も弱く, ついで荒木田で, 火山灰土はかなり強かつた。腐葉土はアルカリ側で強かつたが, 酸性側では火山灰土に劣つた。
    いずれの土も腐葉土を加えることにより, 両者の中間の緩衝能力を示した。
    3. 与えたカチオンの種類によつて緩衝能力の程度は異なり, 一, 二の例外を除いてNa<K<NH4<Ba~Caの順位であつた。腐葉土では1価と2価のカチオンとの間に顕著な差があり, 後者の場合に強い緩衝能力を示した。
    4. りん酸吸収係数は火山灰土は2270ですこぶる高く, 荒木田は207と少なく, 川砂および腐葉土は0であつた。火山灰土に腐葉土を加えることにより吸収係数はてい減した。
    5. 土壌を4週間 incubate して硝化作用を調べた。その結果は火山灰土や埴土では硝酸化成が順調に行なわれたが, 砂壌土やことに川砂では全く行なわれなかつた。川砂に有機物を少量添加したところ硝酸化成が起つた。
    火山灰土に腐葉土を加えた混合土では, いずれの無機, 有機質肥料区においても, 火山灰土区に比べて硝化作用が1~2週間遅延した。この理由は一度風乾した腐葉土を使用したためと思われた。
    6. 以上の実験から, 荒木田や川砂に腐葉土を混合することによつて, 著しくカチオンの吸着性を増し, 緩衝能力を高め, 置換容量を増加し, それらの結果として肥料養分の溶脱を防ぐと共に, 施肥によるpHの変動を少なくする効果があることが判つた。また火山灰土に腐葉土を混合することにより, りん酸の吸着を著しくさまたげ, その肥効を高めることが明らかとなつた。これらの化学性の改善は前報(16)で述べたような物理性の改善と相まつて, 苗の生育に好影響を与えるものと推察される。
    また乾燥した腐葉土の使用は, 硝化作用を遅延させるので, 実際に適用の際には注意する必要があると思われる。
  • 休眠期間中の球内成分の消長について
    加藤 徹
    1966 年 35 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギ球の休眠の生理学的機構を明らかにするために炭水化物•窒素化合物•Auxin および Gibberellin 代謝について調査した。
    1. 炭水化物および窒素化合物は貯蔵に伴つて外側の肥厚葉から順次中央部へ, 中央部から内部の葉および生長点部へ分解, 転流, 蓄積の過程をたどるが, 全体として球内の炭水化物濃度は減少していく傾向がみられる。
    このような傾向は萠芽促進球と不萠芽球との間でもみられた。
    2. 同一栽培条件下でみられる球の大小によつて, 球内の炭水化物および窒素化合物濃度はほとんど変らないが, 栽培条件の異なる球の大小球の間には顕著な差異がみられた。すなわち, 遮光下の球, 窒素が追加されなかつた球は, 日照の十分な球および窒素が追加された球にくらべて小さく, 炭水化物濃度も低かつた。
    3. 倒伏の早い球はおそい球にくらべ, 各肥厚葉ともに炭水化物濃度がわずかながら低い傾向がみられた。窒素化合物含量については著しい差はみとめられなかつた。
    4. 肥大ちゆうのタマネギには相当量の Auxin がみとめられたが, 肥大末期から減少しはじめ, 収穫時, 収穫後とさらに減少をつづけ, 8月26日に最低を示した。その後は逆に増加しはじめ, 9月, 10月とその増加がいつそう顕著となつた。
    逆に Rf 0.7~1.0 に存在する生長抑制物質は収穫時前後最高含量を示し, 貯蔵に伴つて減少するが, 萠芽後もわずか残つていた。
    5. 萠芽促進球は不萠芽球にくらべて著しく Auxin 含量が多いが, 生長抑制物質もかなりの量がみとめられた。
    6. 球の大小間には頂芽部内の Auxin 含量にほとんど差異がみとめられなかつた。倒伏の早い球はおそい球にくらべ Auxin 含量が少なかつた。
    7. 休眠球にはほとんど Gibberellin 様物質がみとめられなかつたが, 8月26日になると, その出現がみとめられ, 9月20日には相当量の Gibberellin 様物質がみとめられ, 増加していた。
    8. 以上の結果にもとずいてタマネギ球の休眠機構はジャガイモ, グラジオラスでいわれている抑制物質との関係は少なく, 炭水化物代謝と密接な関係があることが考えられた。
  • すいりの発生経過について
    高野 泰吉
    1966 年 35 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本実験はすいり発生経過について生理解剖的変化を観察した。
    TTC 反応による肥大根組織の活力診断によれば, 道管列から離れた部分に生理的活性の低い細胞分裂能力を失なつた巨大柔細胞が存在する。すいりが進行するにつれて, 換言すれば組織の老化にともなつてTTC反応も弱まる。「す」の発現が肉眼的にみとめにくいとき, TTC反応ですいり始めを見いだすことができる。
    すいりの発生経過は生理的活性が弱まり, 中葉ペクチンの脱エステル化や低分子化がおこり, 蛋白様物質の変成や分解も関与して, 離生的に間隙を形成し, それが拡大されて「す」となる。
    これらの解剖的観察においてTTC反応による組織の活力診断のほか, ヒドロキシラミン-鉄反応によるペクチン質の存在形態の判別と位相差顕微鏡による微細構造の観察とは従来の知見に見解を付加することに大変役立つた。
  • 塚本 洋太郎, 富士原 健三, 木村 雅行
    1966 年 35 巻 2 号 p. 158-169
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    マーガレットの挿芽苗を秋に準備し, 低温にあてないようにプアイトトロンの20°C室で育て, 秋末に摘心しで1株3本立にしたものを異なつた温度, 日長の条件において開花反応を調べた。もし, 30°Cに続けておけば, 日長の差に関係なく発らいしないが, 20°Cでは短日によつて花芽形成が行なわれる。短日の期間が100日になると長日に移しても100%発らいするが, 短日期間が30日であると90%以下に低下する。解剖してみた場合は, 短日40日後長日にもどした区でも花芽は分化している。
    花芽形成に最も強く影響するものは低温で, 摘心後20日を経た苗に10°C程度の低温を40日以上あたえると100% 発らいする。しかし, 完全に開花させるためには苗令40日になつたものを用いねばならない。その場合, 低温期間は10日でもじゆうぶんである。
    低温処理中の日長を長日 (18時間) と短日 (8時間) に分け, 処理後20°Cにもどし, これらの両区をそれぞれ2つに分けて長日と短日においたが, 短日-長日の組合せが最も早く発らい, 開花し, 短日-短日の組合せは最も遅れた。すなわち, マーガレットは短長日植物に似た傾向を示し, 花芽分化後は長日が促進的である。20°Cにおいて短日を50日与えたものにジベレリンを散布したが, 発らいは促進されても開花せず, ブラインドになつた。
  • 肥料3要素および水分の吸収量の季節的消長
    萩屋 薫, 雨木 若橘
    1966 年 35 巻 2 号 p. 170-176
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. チューリップの施肥に関する基礎資料を得る目的で, ガラス室で William Pitt の大球 (15~16g) と小球 (2.0~2.2g) を用い, れき耕栽培の方法により, 肥料の3要素および水分の吸収量の季節的消長を調査した。
    2. 3要素の吸収は水分の吸収とほぼ平行的な消長を示し, いずれも地上発芽期以前にはきわめて少なかつたが, 展葉期以後は急速に吸収量が増加し, 開花期直後に最高に達し, それ以後はまた低下した (第2•3図参照)。
    3. 各要素の吸収量についてみると, 窒素は吸収量が最も高く, 発芽期以前にもかなり吸収された。カリは窒素についで多く吸収され, とくに地上部が枯死するころまで吸収が続いた。りん酸の吸収は最も少なかつた。
    4. 大球と小球とでは3要素の吸収比率が異なり, 小球は大球よりも窒素を多く吸収した。また小球は大球より1株当たりの養水分の吸収総量が少ないばかりでなく, 球根1gを増加するに要する養水分量も小球が大球より少なかつた。これは小球が少量の養水分で能率よく球根を増殖させる能力のあることを示すものといえよう。
  • 促成中の夜温, 日長, 光度および光の種類が生育, 開花に及ぼす影響
    石田 明
    1966 年 35 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 本実験はミヤコワスレの生育, 開花におよぼす, 促成中の夜温, 日長, 光度, 光の種類の影響を調べるために行なつた。
    夜温, 10°C, 15°C, 日長, 8時間, 24時間の組合せ処理, 光度は寒冷しや, ヨシズ, ゴモの被覆によつて自然光のそれぞれ, 51.3%, 32.5%, 12.5% にかえる処理, 光の種類はセロハンにより, 赤, 青, 黄, 白にかえる処理を行なつた。
    2. 促成中の高夜温 (15°C) と長日 (24時間) は, 生育, 開花を促進した。夜温15°Cにおいては, 24時間日長区は8時間日長区よりも, 生育, 開花を促進した。
    夜温10°Cの長日区は, 夜温15°Cの短日区 (8時間) よりも, 効果的であつた。
    開花期, 草丈, 葉数, 花径については, 夜温と日長との間に交互作用が認められた。したがつて, 生育と開花の促進については, 夜温と日長の間に, ある程度, 相互補償作用があるとおもわれた。
    3. 促成期間中の高光度は, 開花を促進したが, 生育を遅らせた。しかし, 自然光の32.5%までの低光度は開花を遅らせたが, 生育を促進した。12.5%の光度では, 約60%のブラインドが発生した。
    4. 赤色光線は, 生育と開花を促進したが, 青, 黄, 白色の光線は, 赤色光線ほどじゆうぶんに促進しなかつた。
  • 緑枝接と前年枝接とにおける活着経過の組織学的観察
    庵原 遜
    1966 年 35 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    (1) 1963•1964年の2か年にわたつて, ナシ•モモ•カエデ•ハクモクレン•ロウバイ•ツバキ•サザンカを材料として, 緑枝接と前年枝接との活着経過を組織学的に観察比較した。
    (2) 緑枝接の場合, 実験に使つた各花木はいずれも良く活着したが, 前年枝接の場合ナシ以外はすべて活着せず, 3~4週間で穂木が枯死してしまつた。
    (3) 緑枝接でも, 前年枝接でも, 接木が活着する場合, その組織学的な一般経過は次の3つの Stage に分けることがでぎる。
    1. 第1 Stage: 台木と穂木の形成層に近い柔細胞が分裂してゆ創細胞を形成し, それぞれの傷面より押し出して両者が接触する。
    2. 第2 Stage: 接触したゆ創細胞がさらに分裂増殖して, 互いに交錯抱合する。
    3. 第3 Stage: 交錯抱合したゆ創組織中の一部の細胞が分化して連絡形成層となり, 台木と穂木の形成層を連絡する。この時期にはゆ創組織中の一部の細胞が分化して彎曲した通導管となり, 台木と穂木の通導組織を連絡している。
    この第3 Stage で接木のゆ合作用は完成したといえる。
    4. 前年枝接(ナシ)の場合, ゆ創細胞が形成されるのは, 台木穂木ともに形成層に近い飾部組織の柔細胞からだけであつたが, 緑枝接の場合は形成層に近い木部および篩部組織の柔細胞はもちろん, 少し遅れてPith, Protoxylem, Cortex の柔細胞からも分裂形成される。
    5. ゆ合作用の進行速度は, 前年枝接 (ナシ) の場合第3 Stage (形成層の連絡) に達するのに5~6週間を要したが, 緑枝接の場合は一般に非常に早く, ナシ•モモは10~12日, ハクモクレン•ツバキ•サザンカは20~25日, カエデ•ロウバイは25~30日で第3 Stageに達した。
    6. 緑枝接は, 台木と穂木の組織が若くて未分化の柔細胞が多く, いろいろな組織からゆ創細胞が分裂形成されることと, 接木時期の環境条件がゆ合組織の形成発達に有利なことなどのために, 接木活着が容易であると考えられる。
  • 郭 炳華, マクドナル T.
    1966 年 35 巻 2 号 p. 190-194
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    殺菌, 殺だに, 殺虫, その他の農薬が花卉植物であるCrinum asiaticum, Catharanthus roseusNeriumOleanderの花粉生長抑制作用に及ぼす影響を, その保護作用を示すCaイオンと関連して研究した。
    各種の農薬をおのおの含んでいる花粉培養液にCaイオンを添加したのと, しないのに分けてテストを行なつた。その培養液中にCaイオンがなかつた場合には農薬の影響を受け, 花粉管伸長は相当抑制されたが, Caイオンがあつた場合には, その抑制作用は減じ, 多少その生存率も高まつた。オーキシン的に作用する農薬, たとえば2,4-Dを培養液に入れたときには, Caの保護作用はみられなかつた。
  • 生育初期の日長が開花および切り花品質に及ぼす影響
    小西 国義, 稲葉 久仁雄
    1966 年 35 巻 2 号 p. 195-202
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    摘心後の初期の日長が開花および切り花品質に及ぼす影響をしらべた。摘心後全体を2つのグループに分け, 一方を12時間日長 (短日) に, 他方を14時間日長 (長日) におき, 一定期間ごとに短日のものは長日へ, 長日のものは短日へ移した。
    1. 花芽分化期は, 両日長間で, ほとんど差がなかつた。
    2. 初期短日の場合は, その期間が長くなるにしたがつて早く開花する傾向がみられた。長日の場合は, 20日間まではほとんど影響がなく, それ以上では開花がおくれた。
    3. 摘心直後の短日処理によつて, 切り花の長さや重さは小さくなり, 長日処理では逆に大きくなつた。初期の短日で総小花数, 舌状花数は減少し, 管状花数は増加した。
    4. 摘心後の短日がわずか5日間でも舌状花率, 八重花率は低下し, 処理日数が増加するにしたがつてこれらはさらに低下した。長日の場合は, 17日間までは影響せず, 20日間以上の処理で舌状花率, 八重花率が増大した。
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