1. 前報で静岡県磐田市においてみられたメロンの生育障害は, 塩分を含む地下水をかん水することにより, それが土壌中に増加するためであることがわかつた。しかしながら, かんがい水ちゆうにどのくらいまでの塩分が含まれていても安全であるか, という問題については明らかにされていない。一方, 塩害は土壌へのカルシウム施用によつて軽減されるかもしれないといわれている。そこで, これらの問題を明らかにする目的で, NaClの濃度5段階 (0, 100, 250, 500, 1,000ppm), 石灰の施用量2段階 (1株当たり0, 40g) で, それぞれの組み合わせにより10処理区を設けた。
2. 葉, 茎, 根の乾物重, 果実の重量, 糖度, 外観, 成熟日数, 5要素の全吸収量は, NaCl の濃度が0から1,000ppmに増加するにつれて著しく減少した。ここで注目すべきことは, 石灰を施用せずに, 100ppmNaClをかん水した植物体に, わずかではあるが葉縁の巻き込み, 葉焼け, 根の褐色化を伴う生育障害がみられたことである。500, 1,000ppm NaCl をかん水した植物体の果実は, 石灰施用のいかんにかかわらず重量が減少し, ネットは発達せず, 果皮も黄色みがかつて外観は著しく劣り, まつたく商品価値はなかつた。
3. 土壌の置換性Na, 電気伝導度, 全値物体のNa2O吸収量, 葉のNa2O, Cl 含量はかんがい水のNaCl濃度が増加するにつれて高まつた。一方, かんがい水ちゆうのNaCl濃度と蒸散に関係があると思われる葉のSiO2含量との間には拮抗関係がみられたが, 各処理区の葉のNa2O, Cl, SiO2含量はそれらの過剰あるいは欠乏症状を示さなかつた。
これらの結果から, メロンの塩害は養水分の吸収を減退させるNaClを含む水をかん水するためであると思われる。
4. 0から250ppm NaClをかん水した場合, 1株当たり40gの石灰施用は地上部, 根の乾物重, 果実の重量を増加させたが, 500ppm以上のNaClをかん水した場合にはなんら影響はみられなかつた。したがつて, 1株当たり40gの石灰施用は, 500ppm以上のNaClを含む水をかん水する場合には, メロンの塩害を軽減できないと思われる。
抄録全体を表示