抄録
ブドウの果色の発現に対する光度の影響が品種間で異なる原因を明らかにする目的で, 若干の品種について光度と果皮中の Anthocyanin および Leucoanthocyanin の消長との関係を中心に調査した。
1. マスカット•ベーリーA, デラウェアおよびマスカット•オブ•アレキサンドリヤについて, 緑熟果のLeucoanthocyanin 含量と完熟の Anthocyanin 含量の間に, 量的な関連性は認められなかつた。
2. デラウェア, 甲州およびマドレス•フィールド•コートの完熟り Anthocyanin 含量は低く, Leuconthocyaninがそれに近い量存在した。また光度の低下により Anthocyanin 含量は著しく減少するが, Leucoanthocyanin含量は逆にやや増加する傾向にあつた。一方, マスカット•ベーリーAおよびキャンベル•アーリーの完熟の Anthocyanin 含量は著しく高く, Leucoanthocyanin含量はその2%以下できわめて低かつた。また光度の低下にともなう Anthocyanin 含量の減少率は低く, Leucoanthocyanin 含量は光度にほとんど影響されなかつた。果汁中の還元糖含量は, いずれの品種においても光度が自然光の25%以下になると減少した。
3. デラウェアおよびマドレス•フイールド•コートでは, 完全しや光処理した果粒に短期間露光することにより Anthocyanin 含量が増加し, Leucoanthocyanin 含量はやや減少した。しかしマスカット•ベーリーAおよびキャンベル•アーリーでは, 同様の処理で両成分に顕著な変化は認められなかつた。
4. これらの結果から, ブドウの果皮における Anthocyanin 形成に対し, 光線は Anthocyanin 形成能の高い品種 (主として黒色種) では間接的に, 低い品種 (主として赤色種) では間接および直接的に作用するように考えられ, その機構について, 糖および Leucoanthocyanin などの消長と関連して考察を行なつた。