園芸学会雑誌
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緑枝接による園芸植物の繁殖に関する研究 (第4報)
カエデの接木について
庵原 遜
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1966 年 35 巻 4 号 p. 405-412

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抄録
(1) 前年枝を使つたカエデの枝接が活着しにくい原因を明らかにするために, 1964年から′65年の間に, イロハモミジを材料としてカルス形成と環境温度との関係を調べ, 更にイロハモミジにノムラを接木したものについて, 同じく環境温度と接木のゆ合組織発達との関係を調べた。
(2) 6日間の観察では, カルスは15°C以下ではほとんど形成されない。20°C以上になると温度の上昇とともに形成量が増加し, 30°Cでは急激に増大した。接木のゆ合組織の発達も, 30°Cでヵビのために阻害されたのを除いて, これと全く同じ傾向を示した。
(3) カルスは組織が若いほどよく形成された。しかし前年生の組織でも, 接木活着に重大な影響をおよぼすほど少なくはなかつた。
(4) カルスは, 休眠期に多く形成され, 生育伸長期にやや少ない傾向はあるが, 年間を通じてつねによく形成された。接木も環境条件を調節すれば, 季節による活着率の差はあるが年間を通じてよく活着した。
(5) 以上の結果は, 接木のゆ合組織の発達がカルスの発達と同じ要因の影響をうけることを示す。また, これまで前年枝を使つたカエデの枝接が活着困難であつたのは, 環境温度の不足によるものであろうと推定される。すなわち, 接木親和性のある樹種において, 接木活着に影響する最大の要因は接木時の環境条件特に環境温度であると考えられた。
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