抄録
1. ミカンの樹の生長, 果実の品質, 葉分析に及ぼす母材を異にした土壌の影響をしらべるため, 縦1.8m, 横1.8m, 深さ1.2mのコンクリート框で試験を行なつた。供試土壌は, 愛媛県下の主要なミカン産地の関前土壌 (秩父古生層硬砂岩, 石灰岩の屑片を多量に含む), 双海土壌 (緑泥片岩), 大平土壌 (黒雲母安山岩), 吉田土壌 (中生層白堊紀砂岩), 小野土壌 (洪積層) および伊台土壌 (花崗閃緑岩) の6種の理化学的性質が著しく違う未耕地土壌を用いた。1957~′64年 (1957年のミカン樹令は4年生) の9年間の樹の生長および果実の品質を報告した前報に引続き, 1962年 (ミカン樹令は9年生)からの後半4か年の葉分析の結果を要約すると, つぎのとおりである。
2. 土壌間で, 葉中の窒素が最も高かつた関前土壌では, 苦土は吸収を抑制されたような含量を示し, さらに窒素とともに石灰の影響でカリ含量も増大しなかつた。反対に, 葉中の窒素が低かつた伊台土壌では, カリ含量が高く, 土壌リンが多かつたこととともにリン含量も増した。
3. 土壌中の置換性苦土が最も多かつた双海土壌では, これに応じて葉中の苦土も高くなつたが, カリが著しく低くなつた。置換性石灰および苦土が少なかつた吉田土壌では, 葉中のカリ含量の増大がきわめて著しかつた。上述以外では, 大平土壌の葉中の石灰および苦土含量が高く, 反対に吉田土壌で低く, 小野土壌では石灰が低かつた。
4. 葉中窒素を3%を境界にして土壌間を比較したとき, 関前土壌の葉中窒素は著しく高く (過剰の傾向), 反対に伊台土壌は低く, 吉田•小野土壌はやや高く, 双海および大平土壌は伊台土壌と吉田•小野土壌の中間を示し, 葉中窒素は土壌間にかなりの差があつた。
5. 葉中の成分間には, 窒素と苦土, カリと石灰, カリと苦土との間には負の有意な相関があり, リンとカリとの間には直接の相互作用によつてあらわれたとはみられない正の有意相関があつた。有意な相関はなかつたが, 窒素とリン, リンと苦土, 石灰と苦土との間には相反する (負の) 傾向が一定していた。土壌中成分 (置換性石灰, 苦土, カリ, 酸可溶リンおよび全リン) と葉中成分との間には, 石灰, 苦土およびリンは正の有意な相関があつたが, カリは負の相関であつた。
6. 葉分析と前報に報告した土壌間の樹の生長および果実の品質の相違との関係については, 関前土壌と伊台土壌で窒素の影響が強いことを認めた以外には, まつたく検討しえなかつた。